田中嵩二の宅建士&賃貸管理士試験ブログ

宅建士試験&賃貸不動産経営管理士試験の受験に役立つ情報を提供します。

重要事項説明

購入意欲のあるお客様にも重要事項を説明しなければならないの?

しなければなりません。購入意欲の有無にかかわらず重要事項はしなければなりません。

 

なんで契約前に重要事項説明が必要なの?

一昔前(昭和42年以前)は、宅建業法には重要事項説明の規定はありませんでした。あったのは「重要な事項について、故意に事実を告げず、又は不実のことを告げる行為」を禁止する規定でした。ただ、これでは「重要な事項」が包括的でその範囲も明確ではなく、故意を要件とするため過失による場合を規制できませんでした。購入者等に宅地建物取引に関する知識が乏しいにもかかわらず、取引物件等に関する重要な事項を明確かつ十分に説明しないまま取引を進め契約が成立した後に、都市計画法等の公法上の制限、抵当権等の第三者の権利その他の事項について当事者の認識の違いが紛争の火種となっていました。そこで、現在の宅建業法では、契約前に売買・貸借等の相手方等に対して法令に基づく制限等を記載した書面の交付と説明の義務を宅建業者に課しました。

 

やむを得ない事情があれば重要事項説明を他人に代理させてもよいか?

その他人が取引主任者でなければ代理はできません。重要事項は、宅建業者が取引士をして宅建業法35条に規定する重要事項を記載した書面を相手方等に交付して説明をさせなければなりません。取引士とは宅建試験に合格し、都道府県知事の登録を受け、有効な取引士証の交付を受けた者をいいます。取引士でない者は、たとえ代表者やベテランの営業担当者であっても重要事項説明をすることはできません。

 

相手方から申出があれば、契約の後に重要事項説明してもよいか?

その場合も契約前にしなければなりません。重要事項説明義務は、買主・借主等が契約するに先立って、契約をするかどうかの判断に影響を及ぼす重要事項を書面に記載して、取引士をしてこの書面を交付・説明させ、購入者等が適正に判断できるようにするためのものです。契約後の説明では意味がありません。

 

先に書面を交付しておいて後日説明することはできるか?

できます。むしろ適切なこととされています。膨大な量の重要事項説明を一気に説明を受けることは、かえって購入者等にとって何が重要であるかをわかりにくくさせることから、わかりやすく整理された重要事項説明書を事前に交付しておき、内容について十分に検討して重要事項説明に臨むほうがより制度趣旨にかなっているといえます。

 

今日のポイント

  • 取引士以外は重要事項説明できない
  • 必ず契約前に説明しなければならない
  • 書面の交付が先行することはむしろ望ましい

 

(過去問にチャレンジ!)

【問 題】宅地建物取引業者A社は、自ら売主として宅地建物取引業者である買主B社と宅地の売買について交渉したところ、大筋の合意を得て、重要事項説明を翌日に行うこととした。しかし、重要事項説明の予定日の朝、A社の唯一の取引主任者である甲が交通事故に遭い、5日間入院することになった。この場合におけるA社の行為に関する次の記述のうち、宅地建物取引業法の規定に違反しないものはどれか。(平成23年 問33)

  1. A社の代表者である乙は、取引主任者ではないが契約締結権限をもつ代表者であるため、甲を代理してB社の代表者丙に対し、甲の宅地建物取引主任者証を提示した上、重要事項説明を行った。なお、乙は宅地建物取引業に30年間携わったベテランであったこともあり、説明の内容に落ち度はなかった。A社の当該行為は宅地建物取引業法の規定に違反しない。
  2. A社の従業者である丁は、有効期間は満了しているが、宅地建物取引主任者証を持っていたため、丁がその宅地建物取引主任者証を提示した上、B社の代表者丙に重要事項説明を行った。A社の当該行為は宅地建物取引業法の規定に違反しない。
  3. 事情を知ったB社の代表者丙から、「自分も宅地建物取引業に長年携わっているので、重要事項説明は契約後でも構わない」という申出があったため、重要事項説明は契約締結後に退院した甲が行った。A社の当該行為は宅地建物取引業法の規定に違反しない。
  4. 事情を知ったB社と合意の上、A社は重要事項を記載した書面を交付するにとどめ、退院後、契約締結前に甲が重要事項説明を行った。A社の当該行為は宅地建物取引業法の規定に違反しない。

 

解 答:4

  1. × 重要事項説明を取引主任者でない者に代わりに行わせることはできません。
  2. × 取引主任者とは、有効な取引主任者証の交付を受けた者をいいます。したがって、有効期間が満了している取引主任者証を持っていた丁に重要事項説明をさせたA社の行為は、宅建業法の規定に違反します。
  3. × 相手方の申出があったとしても、重要事項説明は、契約が成立するまでの間に行わなければなりません。
  4. ○ 重要事項説明は取引の相手方等に契約するか否かの判断材料を提示することが目的です。したがって、書面の交付と説明が別の日となっても、契約成立前であれば、この目的に反することはありません。

 

 

この記事は2014年6月16日の「全国賃貸住宅新聞」に掲載したものです。

※ 法改正により、取引士を取引士に名称変更しております。

 

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広告規制

買ってくれる方、借りてくれる方を募集するためならどんな広告でもできるの?

できません。宅建業法では、広告時期の制限、誇大広告の禁止、取引態様の明示義務という3つのルールがあります。

 

建築確認申請中の建物も広告を出せるの?

宅建業者は、宅地の造成または建物の建築に関する工事が完了する前においては、その工事に関して必要とされる都市計画法上の開発許可、建築基準法上の建築確認、その他法令に基づく一定の許可等の処分があった後でなければ広告をしてはならないことになっています。したがって、申請中の場合は広告を出すことができません。


直線距離では駅まで1㎞程度であるものの実際の道のりでは4㎞ある場合に、ネット広告で「駅まで1㎞の好立地」と表示してもよいのか?

できません。駅までの道のりが1㎞であると一般の購入者を誤認させるような表示であるので「誇大広告」にあたり、宅建業法に違反します。宅建業者は、その業務に関して広告をするときは、宅地または建物の所在・規模・形質・現在もしくは将来の利用の制限・環境もしくは交通その他の利便・代金・借賃等の対価の額もしくはその支払方法もしくは代金もしくは交換差金に関する金銭の貸借のあっせんについて著しく事実に相違する表示をし、または実際のものよりも著しく優良であり、もしくは有利であると人を誤認させるような表示をしてはなりません。これを誇大広告等と呼び、違反すると6カ月以下の懲役刑または100万円以下の罰金に処せられることもあります。ちなみに、顧客を集めるために売る意思のない条件の良い物件を広告し、実際は他の物件を販売しようとするいわゆる「おとり広告」及び実際には存在しない物件等の「虚偽広告」についても、誇大広告等にあたります。また、広告の媒体は、新聞の折込チラシ、配布用のチラシ、新聞、雑誌、テレビ、ラジオまたはインターネットのホームページ等種類を問いません。


マンションの転貸業をする際の広告には、自らが契約の当事者となって貸借を成立させる旨を明示しなければならないの?

明示する必要はありません。宅建業者は、宅地・建物の売買・交換・貸借に関する広告をするときは、自己が契約の当事者となってその取引を成立させるか、代理や仲介業者として成立させるかの別(「取引態様の別」と呼びます)を明示しなければなりません。ここに「転貸」は含まれません。

 

今日のポイント

  • 建築確認・開発許可等の処分があった後でなければ広告できない。
  • 誇大広告に違反すると刑事罰もあり、広告の方法と問われない。
  • 広告の際は取引態様の別を明示しなければならない。

 

(過去問にチャレンジ!)


【問 題】宅地建物取引業者が行う広告に関する次の記述のうち、宅地建物取引業法(以下この問において「法」という。)の規定によれば、正しいものはいくつあるか。(平成24年度 問28)

ア 建物の所有者と賃貸借契約を締結し、当該建物を転貸するための広告をする際は、当該広告に自らが契約の当事者となって貸借を成立させる旨を明示しなければ、法第34条に規定する取引態様の明示義務に違反する。
イ 居住用賃貸マンションとする予定の建築確認申請中の建物については、当該建物の貸借に係る媒介の依頼を受け、媒介契約を締結した場合であっても、広告をすることができない。
ウ 宅地の売買に関する広告をインターネットで行った場合において、当該宅地の売買契約成立後に継続して広告を掲載していたとしても、最初の広告掲載時点で当該宅地に関する売買契約が成立していなければ、宅地建物取引業法第32条に規定する誇大広告等の禁止に違反することはない。
エ 新築分譲住宅としての販売を予定している建築確認申請中の物件については、建築確認申請中である旨を表示をすれば、広告をすることができる。


1.1つ  2.2つ  3.3つ  4.4つ

 

解説

ア× 宅建業者は、広告をするときは取引態様の別を明示し、注文を受けたときは、遅滞なく、取引態様の別を明示しなければなりません。しかし、ここに「転貸」は含まれていません。
イ○ 宅建業者は、宅地の造成や建物の建築に関する工事の完了前は、当該工事に関し必要とされる都市計画法の開発許可、建築基準法の建築確認その他法令に基づく許可等の処分で政令で定めるものがあった後でなければ、当該工事に係る宅地建物の売買・交換(その媒介・代理)、貸借の媒介・代理の業務に関する広告をしてはなりません。
ウ× 宅建業者は、その業務に関して広告をするときは、実際のものよりも著しく優良又は有利であると人を誤認させるような表示をしてはなりません。広告の媒体は、雑誌、テレビ、ラジオ又はインターネットのホームページ等種類を問いません。
エ× 建築確認申請中である旨を表示した場合でも広告をすることはできません。

 

 

この記事は2014年6月9日の「全国賃貸住宅新聞」に掲載したものです。

※ 法改正により、取引士を取引士に名称変更しております。

 

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