田中嵩二の宅建士&賃貸管理士試験ブログ

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業者が賃貸借の媒介をする際、重要事項説明書に賃料も記載しなければならない?

Q.業者が賃貸借の媒介をする際、重要事項説明書に賃料も記載しなければならない?

 

A.賃料までは記載する必要がありません。

 

平成28年度宅建試験に出題された問題をピックアップして解説して行きます。

 

相手方の承諾を得られれば重要事項説明は不要?

必要です。ひと昔前(昭和42年以前)は、宅建業法には重要事項説明の規定はありませんでした。あったのは「重要な事項について、故意に事実を告げず、または不実のことを告げる行為」を禁止する規定でした。ただ、これでは「重要な事項」が包括的でその範囲も明確ではなく、故意を要件とするため過失による場合を規制できませんでした。購入者等に宅地建物取引に関する知識が乏しいにもかかわらず、取引物件等に関する重要な事項を明確かつ十分に説明しないまま取引を進め契約が成立した後に、都市計画法等の公法上の制限、抵当権等の第三者の権利その他の事項について当事者の認識の違いが紛争の火種となっていました。そこで、現在の宅建業法では、契約前に売買・貸借等の相手方等に対して法令に基づく制限等を記載した書面の交付と説明の義務を宅建業者に課しました。

 

重要事項説明は誰でもできるの?

できません。宅建業者は、宅地建物を取得しまたは借りようとする人に対して、契約が成立するまでの間に、書面(重要事項説明書面)を交付してその説明を、取引士にさせなければなりません。その際、取引士は、相手方から請求がなくとも、取引士証を提示しなければなりません。また、書面の交付にあたっては、交付する書面に記名押印しなければなりません。

 

宅建業者が仲介する売買契約は口約束では成立しないの?

売買契約、交換契約、賃貸借契約はすべて諾成契約です。つまり、契約の成立に契約書の作成や引渡し等は不要で、原則として口約束だけで成立します。宅建業者がこれらの取引に関わった場合でもこの原則は変わりません。しかし、宅建業者には、宅建業法で決められた内容を記載した書面(37条書面)を交付す義務が課せられています。契約自体は口約束でも成立しますが、宅建業者が37条書面を交付しないと監督処分に処せられるという仕組みです。

 

外国に在住する方と契約する際はネット上で締結できる?

前述した通り、売買契約も賃貸借契約も交換契約も口約束だけでも成立するので、ネット上でも契約当事者間の合意に問題がなければ民法上の効力は生じます。ただ、売買と交換の場合はその当事者が、および、貸借を含めた場合はその媒介または代理した者が宅建業者だった場合は、必ず契約締結後に契約当事者に37条書面を交付する必要があります。この交付は、現宅建業法ではネット上の交付は含まれないとされています。

 

37条書面の押印は代理可能?

代理不可です。37条書面には、重要事項説明書面と同じく、取引士による記名と押印が必要です。これは、宅建試験に合格していることで不動産取引法務に関する専門知識を有することが確認され、行政庁の登録を受けていることで行政法上のコントロールも受ける公的な立場である取引士に、契約内容を確認させることで、契約後の紛争を防止する趣旨です。したがって、取引士の資格を持たない他の従業者に印鑑を渡し、押印を代理させることは許されていません。なお、37条書面の交付に関しては取引士が行う必要がありません。

 

37条書面に記載して重要事項説明書面には記載しないものは?

両者は性質の異なるものなので、自ずと記載する内容も異なります。宅建試験対策として暗記してもらいたいものは、①物件の引渡時期、②代金・交換差金・借賃の額と支払時期とその方法、③移転登記の申請時期(売買・交換のみ)、④天災その他不可抗力による損害の負担(危険負担)に関する定めの内容、⑤瑕疵担保責任の定めの内容(売買・交換のみ)、⑥租税その他の公課の負担に関する定めの内容(売買・交換のみ)の6項目だけが、37条書面には記載するが、重要事項説明書面に記載する必要がないという点です。なお、④⑤⑥については、契約当事者間でそのような取り決めがなければ記載する必要がありません。

 

(2016年度の問題にチャレンジ!)

【問 30】宅地建物取引業法第35条に規定する重要事項の説明及び同法第37条の規定により交付すべき書面(以下この問において「37条書面」という。)に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

  1. 宅地建物取引業者は、建物の貸借の媒介における重要事項の説明において、借賃の額並びにその支払の時期及び方法について説明するとともに、37条書面に記載しなければならない。
  2. 宅地建物取引士は、重要事項の説明をする際に、相手方から求められない場合は、宅地建物取引士証を提示しなくてもよい。
  3. 宅地建物取引業者は、37条書面を交付する際に、相手方の同意があった場合は、書面に代えて、電磁的記録で交付することができる。
  4. 宅地建物取引業者は、宅地建物取引士をして37条書面に記名押印させなければならないが、当該書面の交付は宅地建物取引士でない従業者に行わせることができる。
正解:4
  1. × 重要事項として説明する必要はありません。契約前の段階だからです。
  2. × 請求がなくても提示しなければなりません。
  3. × 書面に代えて、電磁的記録で交付することは認められていません。
  4. 〇 記名押印と異なり、交付は誰が行ってもよいことになっています。

 

 

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標準媒介契約書以外でも宅地の売買の依頼を受けられるの?

Q.標準媒介契約書以外でも宅地の売買の依頼を受けられるの?

 

A.受けられます。ただし、その旨を媒介契約書面に記載する必要があります。

 

平成28年度宅建試験に出題された問題をピックアップして解説して行きます。

 

宅建業者は口約束で売買の仲介依頼を受けられる?

受けられません。必ず書面により仲介(媒介)の契約を結ばなければなりません。なお、宅建業法で規制されるまで、不動産流通業界では口約束での媒介委託が普通でした。それがため、宅建業者が取引物件を紹介したり、現地案内したりしても、この行為が売買等の媒介の委託に当たるのか否かが明瞭でなく、どの段階で媒介委託の契約が成立したのか明確ではありませんでした。そのため、媒介契約の成否や媒介契約に基づく権利義務の内容、報酬額等についての紛争がたえず、また委託者が宅建業者から紹介を受けた取引相手と直接取引(抜き取引)した場合には裁判上の紛争にまで発展することも多かったといわれています。その後、数回の法改正を経て、宅建業者が宅地建物の売買、交換の媒介契約を締結したときは、遅滞なく、宅建業法が定める事項を記載した書面を作成して記名押印し、委託者に交付することが義務付けられました。

 

売買の仲介で使う契約書はどんなものでもいいの?

宅建業法34条の2に定められている条件を充たした契約書でなければなりません。宅地建物の媒介は、大量的かつ反復継続して行われるため円滑な取引を確保し、宅建業者が委託者に不利な内容の媒介契約を結ぶことを避けるため、住宅宅地審議会で標準媒介契約書及び同約款を策定しております。この中には、「一般媒介契約」「専任媒介契約」「専属専任媒介契約」の3種類あります。一般媒介契約とは、他の業者に重ねて依頼することができる契約です。この契約は、明示義務のある一般媒介(依頼した他の業者を明示する義務のある契約)と明示義務のない一般媒介(依頼した他の業者を明示する義務のない契約)に分けられます。また、専任媒介契約とは、他の業者に重ねて依頼することができない契約をいいます。さらに、専属専任媒介契約とは、他の業者だけでなく自ら取引することもできない(自己発見取引禁止の特約)契約をいいます。
専任媒介契約と専属専任媒介契約は、依頼者が他の業者に依頼することを禁止するものであり、あまりに長期にわたり依頼者をこの特約で拘束することは依頼者にも宅建業者側にも不利益となる場合が考えられます。そこで、宅建業法では契約の期間についてルールを定めています。一般媒介契約にはこのような規制はありません。また、専任媒介契約または専属専任媒介契約を締結した宅建業者は、依頼者に対し、その契約に係る業務の処理状況を定期的に報告しなければなりません。これについても一般媒介契約の場合は適用がありません。さらに、宅建業者は、専任媒介契約または専属専任媒介契約を締結したときは、契約の相手方を探索するため、一定の期間内に、指定流通機構に登録しなければなりません。これについても一般媒介契約の場合は登録義務がありません。

 

一般媒介契約書にも売買すべき価額を記載するの?

一般媒介も専任媒介も専属専任媒介もすべて記載する義務があります。具体的には、①物件を特定するために必要な事項、②売買すべき価額、または評価額、③媒介の種類(一般・専任・専属専任の別)、④報酬額、⑤契約の有効期間、⑥解除・媒介契約違反の場合の措置、⑦指定流通機構への登録に関する事項、⑧標準媒介契約約款に基づくか否か。基づかない場合はその旨の8つを記載する必要があります。この書面には宅建業者の記名押印が必要ですが、重要事項説明書面のように宅地建物取引士による記名押印は必要ありません。なお、賃貸借を依頼された際の媒介契約の場合は、法律上は契約書作成が義務付けられていません。


(2016年度の問題にチャレンジ!)

【問 27】 宅地建物取引業者Aが、BからB所有の宅地の売却に係る媒介を依頼された場合における次の記述のうち、宅地建物取引業法(以下この問において「法」という。)の規定によれば、正しいものはどれか。なお、この問において一般媒介契約とは、専任媒介契約でない媒介契約をいう。

  1. AがBと一般媒介契約を締結した場合、当該一般媒介契約が国土交通大臣が定める標準媒介契約約款に基づくものであるか否かの別を、法第34条の2第1項に規定する書面に記載する必要はない。
  2. AがBと専任媒介契約を締結した場合、当該宅地の売買契約が成立しても、当該宅地の引渡しが完了していなければ、売買契約が成立した旨を指定流通機構に通知する必要はない。
  3. AがBと一般媒介契約を締結した場合、当該宅地の売買の媒介を担当するAの宅地建物取引士は、法第34条の2第1項に規定する書面に記名押印する必要はない。
  4. Aは、Bとの間で締結した媒介契約が一般媒介契約であるか、専任媒介契約であるかを問わず、法第34条の2第1項に規定する書面に売買すべき価額を記載する必要はない。
正解:3

 

  1. × 標準媒介契約書の様式に基づくか否かの別は、専任媒介契約・専属専任媒介契約だけでなく、一般媒介契約でも、媒介契約書面に記載しなければなりません。
  2. × 宅建業者は、指定流通機構に登録した宅地または建物の売買または交換の契約が成立したときは、遅滞なくその旨をその登録に係る指定流通機構に通知しなければなりません。契約が成立したときに遅滞なく通知する義務があるので、引渡しが完了するまで待つことができません。
  3. 〇 専任媒介契約を締結したとき、宅建業者は、媒介契約書を作成して記名押印し、依頼者にこれを交付しなければなりません。しかし、この媒介契約書に取引士をして記名押印させる必要はありません。
  4. × 売買すべき価額は、専任媒介契約・専属専任媒介契約だけでなく、一般媒介契約でも、34条の2書面(媒介書面)に記載しなければなりません。

 

 

  

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