田中嵩二の宅建士&賃貸管理士試験ブログ

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購入して移転登記を済ませた不動産が、実は前々主が脅されて売った物だった場合どうなるの?

Q.購入して移転登記を済ませた不動産が、実は前々主が脅されて売った物だった場合どうなるの?

 

A.前々主が取り消した後に購入した場合は保護される可能性があります。

 

平成28年度宅建試験に出題された問題をピックアップして解説して行きます。

 

 

物権って何?

一定の物を直接に支配して利益を受ける排他的な権利をいいます。とても重要な定義なので覚えておきましょう。言い換えれば、土地などの特定の物を誰の手助けもなく、自分の物だと誰に対しても主張できる権利です。物権を理解するためには、①物権法定主義、②物権変動を目的とする法律行為、③物権変動の対抗要件の3つを整理する必要があります。

 

物権の内容は自由に決められるの?

決められません。法律で定められたものに限られるとするのが原則です。「朝だけ隣地に車を止めてよい権利」とか「冬場だけ隣地で洗濯物を干せる権利」など自由に物権を設定できてしまうととても複雑な権利関係を生み、自由な経済活動が阻害されてしまうからです。封建制度における複雑な土地の権利を「所有権」という単純明快な権利に一本化したわけです。もちろん、その根底には資本主義の実現という近代革命の思想があります。これを物権法定主義といいます。

 

不動産を購入した場合、いつ自分の物になるの?

民法176条には「物権の設定及び移転は、当事者の意思表示のみによって、その効力を生ずる」と書かれています。感覚としては、司法書士に依頼して移転登記を行って登記情報に自分の名前が載ってはじめて自分の物になったと実感するのが普通ですが、民法上はそういった形式よりも意思表示を重視しています。つまり、この土地を私からあなたの所有物にしますと約束すると、その土地の所有権は移転するということです。

 

先月購入した土地がその後二重に売られてしまったら?

前述した通り、物権には「排他性」があります。あなたが正当な所有者から土地を購入すれば、所有権はあなたのもとに移転し、排他性があるから自分以外のいかなる人の所有権の成立をも許さなくなります。しかし、所有権という権利は目に見えないので、この理屈にはかなり無理があります。正当な所有者から購入したつもりが、実は数時間前に他の人に売られていたなんてことでは、安心して取引できなくなります。そこで考えられたのが「公示」という制度を作りました。つまり、AからBに所有権が移転したことを第三者から見てもわかるように公に示す必要があるとするわけです。不動産の場合は登記がその役割を担っています。結果的には、第三者にも主張できる完全なる物権を取得するためには登記(不動産の場合)をしておかなければならないわけです。


学習のポイント

物権とは一定の物を直接に支配して利益を受ける排他的な権利をいう。物権変動は意思表示のみで生ずる。不動産の取得を第三者に主張するには登記が必要。


(過去問にチャレンジ!)

【問 題】 AがBから甲土地を購入したところ、甲土地の所有者を名のるCがAに対して連絡してきた。この場合における次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。(平成22年度 問4)
1 CもBから甲土地を購入しており、その売買契約書の日付とBA間の売買契約書の日付が同じである場合、登記がなくても、契約締結の時刻が早い方が所有権を主張することができる。
2 甲土地はCからB、BからAと売却されており、CB間の売買契約がBの強迫により締結されたことを理由として取り消された場合には、BA間の売買契約締結の時期にかかわらず、Cは登記がなくてもAに対して所有権を主張することができる。
3 Cが時効により甲土地の所有権を取得した旨主張している場合、取得時効の進行中にBA間で売買契約及び所有権移転登記がなされ、その後に時効が完成しているときには、Cは登記がなくてもAに対して所有権を主張することができる。
4 Cは債権者の追及を逃れるために売買契約の実態はないのに登記だけBに移し、Bがそれに乗じてAとの間で売買契約を締結した場合には、CB間の売買契約が存在しない以上、Aは所有権を主張することができない。

 

正解:3


1× 買主であるAとCは、甲土地の所有権の登記をしなければ、所有権を主張することができない関係となります。契約締結時刻の時期は無関係です。
2× 取消後に取引関係に入った第三者の場合は二重譲渡と同じく対抗関係となります。したがって、Cは登記がなければAに対し所有権を主張することができません。
3○ 不動産の取得時効完成前に原所有者から所有権を取得し時効完成後に移転登記を経由した者に対し、時効取得者は、登記なくして所有権を対抗することができますしたがって、Cは登記がなくてもAに対して所有権を主張できます。
4× 相手方と通じてした虚偽の意思表示は無効です。しかし、この無効は善意の第三者には対抗することができません。

 

  

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抵当権設定の代理権を与えられた者が本人の振りをして売却したらどうなるの?

Q.抵当権設定の代理権を与えられた者が本人の振りをして売却したらどうなるの?

 

A.買主(相手方)に過失がなければ本人に対して売買の効力を主張できます。

 

平成28年度宅建試験に出題された問題をピックアップして解説して行きます。

 

代理って何?

前回の記事では意思表示について勉強しました。意思表示には効果意思という要素がありました。不動産を購入して代金を支払う等の効果意思をもち、それを表現し、その結果を受け入れるのは、すべて同じ人であることが原則です。代理は、効果意思の決定と表現する人と、その結果を受け入れる人が異なる特殊な例外となります。不動産を購入すると決める人と、実際に不動産を手に入れ代金を支払う人が異なるということです。理屈っぽい言い回しですが、代理を理解するにはとても大切なことです。

 

意思表示するのは本人?代理人?

代理人が意思表示します(代理人意思説)。ただ、この点、学説上は争いがあります。意思表示するのは本人であり代理人がそれを代行しているに過ぎないとする見解(本人意思説)もありますが、この対立は当時明文規定を持たなかったドイツにおける議論であり、明文規定を有するわが国では実益がないとも言われています。しかし、本人ではなく代理人が意思表示するという点を意識して勉強することで理解は深まります。代理人意思説では、代理における行為者は代理人(と相手方)であり、代人は自らの意思を表示するとし、代理人のした意思表示の効果が本人に生じるのは、代理人が本人への効果帰属を欲し(代理意思を有し)、それが表示されたときにその意思を法が承認することによると説明されます。そして、本人と代理人との間の契約(委任契約など)と、代理人と相手方との契約(売買契約など)は別個独立のものであり、代理人が本人に効果帰属すると意思表示するからこそ本人に効果帰属するとします。難しい言い回しですが、要は、代理人の方が主導権を握っているということです。

 

代理人意思説はどんなところに現れているの?

たとえば、民法111条には、代理人が後見開始の審判を受けたようなときは代理権が消滅すると定められています。本人ではなく代理人が意思表示をするからこそ、代理人だけがその対象になっているわけです。また、民法101条1項には、意思表示の効力が詐欺、強迫又はある事情を知っていたこと若しくは知らなかったことにつき過失があったことによって影響を受けるべき場合には、その事実の有無は、代理人について決するものとすると定められています。これも、意思表示をするのが代理人であり本人ではないからです。

 

本人に効果帰属するってどういう意味?

代理でもっとも解りにくいところが、「効果が帰属する」という表現だと思います。「効果が帰属しない」=「無効」ではありませんので注意が必要です。代理権がないにもかかわらず代理人の振りをして他人の不動産を売却したような場合、これを無権代理と呼び、「本人に効果が帰属しない」と表現します。これはあくまでも本人に対して効力が生じないだけです。もしこれを無効と解釈すると、無効について定めた民法119条と無権代理行為の追認を定めた116条が矛盾することになります。すなわち、119条には「無効な行為は、追認によっても、その効力を生じない。ただし、当事者がその行為の無効であることを知って追認をしたときは、新たな行為をしたものとみなす。」とあるのに対して、116条には「追認は、別段の意思表示がないときは、契約の時にさかのぼってその効力を生ずる。」とあります。無権代理の追認を定めた同条は無効とは明らかに異なります。

 

学習ポイント

代理人が後見開始の審判を受けたら代理権は消滅する。詐欺や強迫等の事情は代理人で判断する。無権代理行為を追認するとさかのぼって有効な代理になる。

 

(過去問にチャレンジ!)

【問 題】 代理に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはいくつあるか。(平成26年度 問2)
ア 代理権を有しない者がした契約を本人が追認する場合、その契約の効力は、別段の意思表示がない限り、追認をした時から将来に向かって生ずる。
イ 不動産を担保に金員を借り入れる代理権を与えられた代理人が、本人の名において当該不動産を売却した場合、相手方において本人自身の行為であると信じたことについて正当な理由があるときは、表見代理の規定を類推適用することができる。
ウ 代理人は、行為能力者であることを要しないが、代理人が後見開始の審判を受けたときは、代理権が消滅する。
エ 代理人の意思表示の効力が意思の不存在、詐欺、強迫又はある事情を知っていたこと若しくは知らなかったことにつき過失があったことによって影響を受けるべき場合には、その事実の有無は、本人の選択に従い、本人又は代理人のいずれかについて決する。


一つ  二つ  三つ  四つ

 

解答:二つ


ア× 追認は、別段の意思表示がないときは、契約の時にさかのぼってその効力を生じます。追認した時から将来に向かって生ずるわけではありません。
イ〇 代理人が直接本人の名において権限外の行為をした場合において、相手方がその行為を本人自身の行為と信じたときは、そのように信じたことについて正当な理由があるかぎり、表見代理の規定を類推して、本人はその責を負います。
ウ〇 代理人は行為能力者であることを要しません。しかし、代理人が後見開始の審判を受けることが代理権の消滅原因となっています。
エ× 意思表示の効力が意思の不存在、詐欺、強迫又はある事情を知っていたこと若しくは知らなかったことにつき過失があったことによって影響を受けるべき場合には、その事実の有無は、代理人について決します。

 

 

 

  

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