田中嵩二の宅建士&賃貸管理士試験ブログ

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抵当権付きの土地を購入した後に、抵当権が実行されるとどうなるの?

Q.抵当権付きの土地を購入した後に、抵当権が実行されるとどうなるの?

 

A.売主に対して担保責任を追及することができます。

 

平成28年度宅建試験に出題された問題をピックアップして解説して行きます。

 

売主の負う担保責任とは?

売主の担保責任とは、売買契約の目的物に問題がある場合に、買主が予想しなかったような損害を受けないように、売主に課せられた特別の責任のことです。たとえば、ビルを建て店舗を構える目的で土地を購入したが、都市計画で設計していた建物が建てられないことが後に判明したような場合に、買主が売主に対して責任追及できるなどです。売主の責任類型には、①他人の物を売ってしまった責任、②一部が他人の物だった場合、③抵当権等がついていた物を売ってしまった責任、④地上権などがついていた物を売ってしまった責任、⑤数量が不足の物を売ってしまった責任、⑥目的物に瑕疵(かし)があった場合の責任、があります。また、責任の取り方にも①損害賠償、②減額、③契約解除、の3つがあり、それぞれの類型ごとに異なります。
売主の担保責任にはいくつか特徴があります。まず、売主側に過失がなくても損害賠償等の責任が発生することです(特に瑕疵担保責任について)。これは債務不履行責任と大きく異なるところです。つぎに、特定物の原始的瑕疵に限られるということです。原始的とは契約時という意味です。契約後に生じた瑕疵は債務不履行または危険負担として解決できるからです。さらに、特定物に限ることです。新品の自動車などの不特定物(種類物ともいいます)の場合は代わりの瑕疵のない物を引き渡せば足りるからです。

 

他人の不動産を売る人はどんな責任が?

不動産の売買契約をした売主は、その不動産を買主に移転する債務を負います。この債務は、その不動産が売主以外の所有物であっても有効に成立します。もちろん、不動産を移転する債務が有効であるからといって、その不動産の所有権が買主に移転したというわけではありません。物権変動が生じるかどうかは次元の異なる話です。このような場合、売主がその不動産の所有者から取得する契約を締結した場合は、所有権は売主を経由してただちに買主に移転します。しかし、売主がその不動産の所有者から取得できないとき、売主は買主に対して担保責任を負います。つまり、買主は悪意であっても契約を解除することができ、善意の場合は損害賠償を請求することができます。

 

抵当権付きの不動産を売る人はどんな責任が?

抵当権は、地上権や賃借権とは異なって、それが設定されていても購入した人が自由に使用できるので、その行使によって買主が目的物の所有権を失ったり、買主が費用を支出して抵当権消滅請求権等を行使して所有権を保存したりした場合にだけ、買主に損害賠償請求権や解除権の行使が認められています。なお、買主は善意・悪意を問いません。抵当権の存在を知っていても、売主などが債務を弁済し、抵当権を消滅してくれるだろうと期待して、譲り受ける者もいるからです。

 

学習のポイント

売主の担保責任については、例外的に悪意の買主でも追及できる場合はどういう場合かということと、権利行使の期間制限があるのはどういう場合かということの2点を覚えてしまえば、たいていの問題には対処できます。

 

(過去問にチャレンジ!)

【問 題】 Aを売主、Bを買主とする甲土地の売買契約(以下この問において「本件契約」という。)が締結された場合の売主の担保責任に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、 誤っているものはどれか。(2016年度問8)
1 Bが、甲土地がCの所有物であることを知りながら本件契約を締結した場合、Aが甲土地の所有権を取得してBに移転することができないときは、BはAに対して、損害賠償を請求することができない。
2 Bが、甲土地がCの所有物であることを知りながら本件契約を締結した場合、Aが甲土地の所有権を取得してBに移転することができないときは、Bは、本件契約を解除することができる。
3 Bが、A所有の甲土地が抵当権の目的となっていることを知りながら本件契約を締結した場合、当該抵当権の実行によってBが甲土地の所有権を失い損害を受けたとしても、BはAに対して、 損害賠償を請求することができない。
4 Bが、A所有の甲土地が抵当権の目的となっていることを知りながら本件契約を締結した場合、当該抵当権の実行によってBが甲土地の所有権を失ったときは、Bは、本件契約を解除することができる。


正解:3


1〇 他人物売買において、売主がその売却した権利を取得して買主に移転することができないときは、買主は、契約の解除をすることができ、また、契約時においてその権利が売主に属しないことを知らなかったとき(善意)は損害賠償の請求をすることができます。したがって、悪意のBはCに対して損害賠償を請求できません。
2〇 他人物売買において、売主がその売却した権利を取得して買主に移転することができないときは、買主は、契約の解除をすることができ、また、契約時においてその権利が売主に属しないことを知らなかったとき(善意)は損害賠償の請求をすることができます。つまり、解除に関しては善意でも悪意でもすることができます。したがって、Bは本件契約を解除することができます。
3× 売買の目的である不動産について存した抵当権の行使により買主がその所有権を失ったときは、買主は、契約の解除をすることができます。この場合において、買主は、損害を受けたときは、その賠償を請求することができます。これらの権利は、買主が、抵当権が設定されていることを知っていた場合(悪意)でも行使できます。したがって、BはAに対して損害賠償を請求することができます。
4〇 売買の目的である不動産について存した抵当権の行使により買主がその所有権を失ったときは、買主は、契約の解除をすることができます。この場合において、買主は、損害を受けたときは、その賠償を請求することができます。これらの権利は、買主が、抵当権が設定されていることを知っていた場合(悪意)でも行使できます。したがって、Bは本件契約を解除することができます。

 

 

  

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土地を購入し手付金を支払ったが、後日登記情報を調べてみたら他の人に売却されていた場合、どうすれば?

Q.土地を購入し手付金を支払ったが、後日登記情報を調べてみたら他の人に売却されていた場合、どうすれば?

 

A.債務不履行として売主に損害賠償請求することができます。

 

平成28年度宅建試験に出題された問題をピックアップして解説して行きます。

 

 

債務不履行って何?

債務不履行とは、債務者が、正当な事由がないのに債務の本旨に従った給付をしないことをいいます。契約に違反することとほぼ同じ意味と思ってください。伝統的な見解に従えば、債務不履行には「履行遅滞」「履行不能」「不完全履行」の3つの類型があると言われています。履行が可能であるにもかかわらず履行すべき時期が経過しても履行がなされない場合が履行遅滞。債権発生後に履行ができなくなる場合が履行不能。債務者が一応お履行をしたけれども、その履行が不完全である場合が不完全履行です。不完全履行は条文に明記されているわけではありませんが、「債務の本旨に従った履行」(民法415条)という文言の解釈から認められています。債務不履行となれば、債権者は、損害賠償請求ができ、契約を解除することもできます。
債務不履行については、過去10年間で5回も宅建試験に出題されています。とても重要な概念なのでしっかりと勉強してください。

 

損害賠償請求するためには?

債務不履行に基づく損害賠償責任が発生するための要件は、①債務の存在、②債務の本旨に従った履行がなされないこと、③債務者の帰責事由、④損害の発生、⑤不履行と損害との間に因果関係があること、の5つです(さらに、違法性、責任能力を要求する見解もあります)。なお、金銭債務の場合は、③の要件が課せられていません。期限に履行しなかったときは常に履行遅滞となり、債務者は不可抗力をもって抗弁できません。また、損害の証明もする必要がなく、特約がなければ損害額は法定利率の年5%となります。

 

不動産が二重に譲渡されるとどうなるの?

債権成立時(契約したときなど)には履行が可能であったが、その後に不能となった場合(後発的不能といいます)を履行不能といいます。ちなみに、債権発生のときにすでに不能である場合(原始的不能といいます)は、そもそも債権が成立しないので、債務不履行の問題は生じません。履行が不能になったかどうかは、物理的な不能の場合に限らず、社会の取引観念に従って債務を存続させることが適当ではない場合一般を含むとされています。具体的には、売買の目的物が盗難にあって行方不明の場合や、不動産が二重譲渡され第三者に登記が移転された場合などです。
不動産が二重に譲渡されると、原則として、先に移転登記をした方がその不動産の正式な所有者となります。これは民法では物権の帰属の話です。次に、登記に遅れて不動産を取得できなかった買主は、売主に対して履行不能を原因として損害賠償請求できます。また、要件を備えれば、債権侵害等を理由に先に登記をした買主に対して不法行為責任等を追及することもできます。さらに、詐害行為取消権を行使して他方の売買契約を取り消すことが可能な場合もあります。

 

契約前の説明義務違反も債務不履行

契約に付随する信義則上の義務として債務不履行と捉える見解も有力ですが、平成23年最高裁判所判例では、契約締結上の説明義務違反は債務不履行責任とならず、不法行為責任の問題としました。債務不履行と捉える見解は、不法行為の要件が日本より厳格なドイツで発展したものです。そういった点も考慮した最高裁判例だったのかと思われます。

 

学習のポイント

不動産の二重譲渡で登記まで移転されていれば履行不能。契約の準備段階での説明義務違反は債務不履行ではない。金銭債務の場合は帰責事由も損害の証明も不要で損害額は法定利率の5%が原則。

 

(過去問にチャレンジ!)

【問 題】債務不履行に基づく損害賠償請求権に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。(平成24年度 問8)
1 AがBと契約を締結する前に、信義則上の説明義務に違反して契約締結の判断に重要な影響を与える情報をBに提供しなかった場合、Bが契約を締結したことにより被った損害につき、Aは、不法行為による賠償責任を負うことはあっても、債務不履行による賠償責任を負うことはない。
2 AB間の利息付金銭消費貸借契約において、利率に関する定めがない場合、借主Bが債務不履行に陥ったことによりAがBに対して請求することができる遅延損害金は、年5分の利率により算出する。
3 AB間でB所有の甲不動産の売買契約を締結した後、Bが甲不動産をCに二重譲渡してCが登記を具備した場合、AはBに対して債務不履行に基づく損害賠償請求をすることができる。
4 AB間の金銭消費貸借契約において、借主Bは当該契約に基づく金銭の返済をCからBに支払われる売掛代金で予定していたが、その入金がなかった(Bの責めに帰すべき事由はない。)ため、返済期限が経過してしまった場合、Bは債務不履行には陥らず、Aに対して遅延損害金の支払義務を負わない。

 

正解:4


1○  契約の一方当事者が、当該契約の締結に先立ち、信義則上の説明義務に違反して、当該契約を締結するか否かに関する判断に影響を及ぼすべき情報を相手方に提供しなかった場合には、上記一方当事者は、相手方が当該契約を締結したことにより被った損害につき、不法行為による賠償責任を負うことがあるが、その契約上の債務の不履行による賠償責任を負うことはありません。
2○ 利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は年5%となります。
3○ 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができます。不動産の二重売買において、一方の買主に対する売主の債務は、特段の事情のない限り、他の買主に対する所有権移転登記が完了した時に、履行不能となり、損害賠償義務が発生します。
4× 金銭の給付を目的とする債務不履行に基づく損害賠償は、債務者の不可抗力をもって抗弁とすることができません。したがって、Bは債務不履行責任としてAに対して遅延損害金の支払い義務を負います。

 

 

  

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