田中嵩二の宅建士&賃貸管理士試験ブログ

宅建士試験&賃貸不動産経営管理士試験の受験に役立つ情報を提供します。

契約前の詐欺的な勧誘行為は不法行為?契約違反?

 

Q.契約前の詐欺的な勧誘行為は不法行為?契約違反?

 

A.不法行為になります。

 

平成28年度宅建試験に出題された問題をピックアップして解説して行きます。

 

 

不法行為って何?

不法行為とは、他人の権利・利益を違法に侵害して損害を加える行為をいいます。不法行為が行われることによって、金銭賠償を請求する債権の発生が認められます。不法行為も契約と同じく、債権発生原因の1つということです。その趣旨は被害者の救済(損害の補填)と将来の不法行為の抑止です。

 

契約違反による賠償と不法行為による賠償は違うの?

民法には、損害賠償請求等の債権が生じるきっかけとして、契約、不法行為事務管理、不当利得の4つを定めています。それぞれに、要件が定められていて、要件となる事実を証明できれば、賠償請求できる仕組みになっています。条文上は、明確に区別されていますが、 実際の運用では、契約違反でもあり、不法行為でもあることが多く、訴える側が収集した証拠等を吟味して、どの条文の理屈で損害賠償請求等をするかを判断します。ただ、その判断が微妙な案件もあります。契約前の商品の説明(勧誘)に虚偽があるような場合です。平成23年4月22日の最高裁判所で扱った事案では、債務超過で実質的に破綻状態にあった信用組合の職員が、顧客にそのことを隠して出資させ、その後すぐに倒産し出資金の払い戻しができなくなった場合は、契約違反として損害賠償することはできず、不法行為として損害賠償請求できるのみであると判断しました。
宅建士試験に必要な範囲で、契約違反(債務不履行)と不法行為を表にまとめました。しっかりと暗記しておきましょう。

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学習のポイント

損害賠償請求等を発生させる原因には契約・不法行為事務管理・不当利得の4つがある。契約前の勧誘行為は不法行為責任となる。

 

(過去問にチャレンジ!)

【問 題】 次の1から4までの記述のうち、民法の規定及び下記判決文によれば、誤っているものはどれか。(2016年度問9)


(判決文)

契約の一方当事者が、当該契約の締結に先立ち、信義則上の説明義務に違反して、当該契約を締結するか否かに関する判断に影響を及ぼすべき情報を相手方に提供しなかった場合には、上記一方当事者は、相手方が当該契約を締結したことにより被った損害につき、不法行為による賠償責任を負うことがあるのは格別、当該契約上の債務の不履行による賠償責任を負うことはないというべきである。(中略)上記のような場合の損害賠償請求権は不法行為により発生したものである(略)。


1 信義則上の説明義務に違反して、当該契約を締結するか否かに関する判断に影響を及ぼすべき情報を買主に提供しなかった売主に対する買主の損害賠償請求権は、買主が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないときは、時効により消滅する。
2 信義則上の説明義務に違反して、当該契約を締結するか否かに関する判断に影響を及ぼすべき情報を買主に提供しなかった売主に対する買主の損害賠償請求権は、損害を被っていることを買主が知らない場合でも、売買契約から10年間行使しないときは、時効により消滅する。
3 買主に対して債権を有している売主は、信義則上の説明義務に違反して、当該契約を締結するか否かに関する判断に影響を及ぼすべき情報を買主に提供しなかった売主に対する買主の損害賠債請求権を受働債権とする相殺をもって、買主に対抗することができない。
4 売主が信義則上の説明義務に違反して、当該契約を締結するか否かに関する判断に影響を及ぼすべき情報を買主に提供しなかった場合、買主は、売主に対して、この説明義務違反を理由に、売買契約上の債務不履行買任を追及することはできない。


解答:2


1〇 判決文は、売主が信義則上の説明義務違反に違反して、買主に損害を与えた本件事案においては、買主は売主に対し、不法行為による損害賠償の請求権(民法709条)を行使することができると判示しています。上記損害賠償請求権は、被害者が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないときは、時効により消滅します(民法724条前段)。
2× 判決文は、本件事案においては、買主は売主に対し、契約上の債務の不履行による損害賠償責任を問うことはできず、不法行為による損害賠償の請求権(民法709条)を行使することができると判示しています。したがって、その時効は、被害者が損害及び加害者を知った時から3年間、行為の時から20年間で消滅します(民法724条前段)。
3〇 判決文は、本件事案においては、売主は買主に対し、不法行為に基づく損害賠償責任(民法709条)を負うと判示しています。債務が不法行為によって生じたときは、その債務者(加害者)は、相殺をもって債権者(被害者側)に対抗することができません(民法509条)。したがって、売主は買主に対し、これを受働債権として売主が買主に対して有する債権と相殺することはできません(民法509条)。
4〇 判決文は、本件事案においては、買主は売主に対し、契約上の債務の不履行による損害賠償責任を問うことはできないと判示しています。したがって、買主は売主に対し、売買契約上の責任を追及することはできません(最判平成23年4月22日)。

 

  

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抵当権付きの土地を購入した後に、抵当権が実行されるとどうなるの?

Q.抵当権付きの土地を購入した後に、抵当権が実行されるとどうなるの?

 

A.売主に対して担保責任を追及することができます。

 

平成28年度宅建試験に出題された問題をピックアップして解説して行きます。

 

売主の負う担保責任とは?

売主の担保責任とは、売買契約の目的物に問題がある場合に、買主が予想しなかったような損害を受けないように、売主に課せられた特別の責任のことです。たとえば、ビルを建て店舗を構える目的で土地を購入したが、都市計画で設計していた建物が建てられないことが後に判明したような場合に、買主が売主に対して責任追及できるなどです。売主の責任類型には、①他人の物を売ってしまった責任、②一部が他人の物だった場合、③抵当権等がついていた物を売ってしまった責任、④地上権などがついていた物を売ってしまった責任、⑤数量が不足の物を売ってしまった責任、⑥目的物に瑕疵(かし)があった場合の責任、があります。また、責任の取り方にも①損害賠償、②減額、③契約解除、の3つがあり、それぞれの類型ごとに異なります。
売主の担保責任にはいくつか特徴があります。まず、売主側に過失がなくても損害賠償等の責任が発生することです(特に瑕疵担保責任について)。これは債務不履行責任と大きく異なるところです。つぎに、特定物の原始的瑕疵に限られるということです。原始的とは契約時という意味です。契約後に生じた瑕疵は債務不履行または危険負担として解決できるからです。さらに、特定物に限ることです。新品の自動車などの不特定物(種類物ともいいます)の場合は代わりの瑕疵のない物を引き渡せば足りるからです。

 

他人の不動産を売る人はどんな責任が?

不動産の売買契約をした売主は、その不動産を買主に移転する債務を負います。この債務は、その不動産が売主以外の所有物であっても有効に成立します。もちろん、不動産を移転する債務が有効であるからといって、その不動産の所有権が買主に移転したというわけではありません。物権変動が生じるかどうかは次元の異なる話です。このような場合、売主がその不動産の所有者から取得する契約を締結した場合は、所有権は売主を経由してただちに買主に移転します。しかし、売主がその不動産の所有者から取得できないとき、売主は買主に対して担保責任を負います。つまり、買主は悪意であっても契約を解除することができ、善意の場合は損害賠償を請求することができます。

 

抵当権付きの不動産を売る人はどんな責任が?

抵当権は、地上権や賃借権とは異なって、それが設定されていても購入した人が自由に使用できるので、その行使によって買主が目的物の所有権を失ったり、買主が費用を支出して抵当権消滅請求権等を行使して所有権を保存したりした場合にだけ、買主に損害賠償請求権や解除権の行使が認められています。なお、買主は善意・悪意を問いません。抵当権の存在を知っていても、売主などが債務を弁済し、抵当権を消滅してくれるだろうと期待して、譲り受ける者もいるからです。

 

学習のポイント

売主の担保責任については、例外的に悪意の買主でも追及できる場合はどういう場合かということと、権利行使の期間制限があるのはどういう場合かということの2点を覚えてしまえば、たいていの問題には対処できます。

 

(過去問にチャレンジ!)

【問 題】 Aを売主、Bを買主とする甲土地の売買契約(以下この問において「本件契約」という。)が締結された場合の売主の担保責任に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、 誤っているものはどれか。(2016年度問8)
1 Bが、甲土地がCの所有物であることを知りながら本件契約を締結した場合、Aが甲土地の所有権を取得してBに移転することができないときは、BはAに対して、損害賠償を請求することができない。
2 Bが、甲土地がCの所有物であることを知りながら本件契約を締結した場合、Aが甲土地の所有権を取得してBに移転することができないときは、Bは、本件契約を解除することができる。
3 Bが、A所有の甲土地が抵当権の目的となっていることを知りながら本件契約を締結した場合、当該抵当権の実行によってBが甲土地の所有権を失い損害を受けたとしても、BはAに対して、 損害賠償を請求することができない。
4 Bが、A所有の甲土地が抵当権の目的となっていることを知りながら本件契約を締結した場合、当該抵当権の実行によってBが甲土地の所有権を失ったときは、Bは、本件契約を解除することができる。


正解:3


1〇 他人物売買において、売主がその売却した権利を取得して買主に移転することができないときは、買主は、契約の解除をすることができ、また、契約時においてその権利が売主に属しないことを知らなかったとき(善意)は損害賠償の請求をすることができます。したがって、悪意のBはCに対して損害賠償を請求できません。
2〇 他人物売買において、売主がその売却した権利を取得して買主に移転することができないときは、買主は、契約の解除をすることができ、また、契約時においてその権利が売主に属しないことを知らなかったとき(善意)は損害賠償の請求をすることができます。つまり、解除に関しては善意でも悪意でもすることができます。したがって、Bは本件契約を解除することができます。
3× 売買の目的である不動産について存した抵当権の行使により買主がその所有権を失ったときは、買主は、契約の解除をすることができます。この場合において、買主は、損害を受けたときは、その賠償を請求することができます。これらの権利は、買主が、抵当権が設定されていることを知っていた場合(悪意)でも行使できます。したがって、BはAに対して損害賠償を請求することができます。
4〇 売買の目的である不動産について存した抵当権の行使により買主がその所有権を失ったときは、買主は、契約の解除をすることができます。この場合において、買主は、損害を受けたときは、その賠償を請求することができます。これらの権利は、買主が、抵当権が設定されていることを知っていた場合(悪意)でも行使できます。したがって、Bは本件契約を解除することができます。

 

 

  

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