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動産の売買契約における売主が代金債権の回収を確実なものとする担保の方法

動産の売買契約における売主が代金債権の回収を確実なものとする担保の方法

1.論点の整理

 

 民法175条は,「物権は,この法律その他の法律に定めるもののほか,創設することができない」と定め,いわゆる物権法定主義を採用する。
 この規定は近代革命期における根本思想から生じたものであり,主として有体物の商品の売買を中心とする資本主義を狙いとして作られたものである。すなわち,過去の封建的な複雑な身分支配関係を排除し,人と物との単純な支配関係を確立することで,取引の安全を確保しようとした。
 もし,各人が自由に物権を創設したとすると,公示方法が要求される物権の取引は混乱に陥ることになる。各人各様の公示方法を外部から容易に認識しえないし,また,技術的にも困難である。それより,物権の種類および公示方法等の内容を画一的に法定し,取引の安全を確保することが望ましいのである。
 しかし,この主義を貫徹し,いかなる物権の創設も許さないとすると,流動する取引実務に適応できず,逆に取引の安全を損ねることにもなる。
 そこで,民法等に規定のないような物権を想定できないかを考える必要がある。本書では,それを中心に検討する。
 ただ,民法に規定する質権等についても触れる。

 

2.質権

 

(1) 意義

 

 質権は,債権者がその債権の担保として債務者又は第三者(物上保証人)から提供を受けた物を占有し,かつその物につき他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受けることのできる約定担保物権である。
 付従性,随伴性,不可分性,物上代位性(通有性)をすべて有し,優先弁済的効力および留置的効力をともに有する。

 

(2) 質物の占有存続は動産質権の存続要件か対抗要件

 

 民法には,質権者は質権設定者をして自己に代わりに質物の占有を為さしめることができない旨定められている(345条)。そこで,質権者が質物を任意に設定者に返還した場合これによって質権が消滅するか,それとも対抗力を失わせるのみなのか問題となる。この点,質権のもつ留置的効力をどの程度重視するかにより左右される。

 

① 質権消滅説(我妻,鈴木,高木,伊藤,近江)

 

 質物返還により質権は消滅するとする。仮に,質権者であるBが質物である動産を質権設定者であるAの利用に供するため返還した場合,Bは質権を実行できないことになる。
 その根拠としては,第一に,345条は質権の留置的効力を確保するための規定であり,質権者自らがこの効力を放棄するにもかかわらず質権の効力が失われないとするのは妥当でないこと。
 第二に,譲渡担保が承認され,代理占有による担保形式が存在する以上返還する必要があるのであればそちらによるべきであることが挙げられている。

 

② 対抗力消滅説(判例,川井,横)

 

 質物返還により対抗力は消滅するが質権自体は消滅しないとする。仮に,質権者であるBが質物である動産を質権設定者であるAの利用に供するため返還した場合でも,AB間は当事者関係にあり対抗関係に立たないため質権は消滅しないことになる。また,Aが債務不履行に陥ればBは質権を実行し弁済を受けることができる。
 その根拠としては,第一に,質権の留置的効力は優先弁済的効力に奉仕するものにすぎず,質物の返還は留置的効力を失わせるにすぎないこと。質権者が留置的効力を放棄するのであれば,質権の対抗力が認められない(352条)という不利益を課すだけで十分であること。
 第二に,345条は質権の成立時にのみ適用されることなどが挙げられている。

 

3.譲渡担保

 

 質権では占有移転が成立要件(または対抗要件)となるため,利用権を動産の所有者に残しつつ金融をはかることが困難である。この弱点を克服すための法的なテクニックが非典型担保としての譲渡担保等である。

 

(1) 譲渡担保一般の定義

 

 譲渡担保とは,担保にしようとする物の所有権そのものを債権者に移し,一定の期間内に弁済をすれば,これを再び返還させるという担保制度をいう。
 たとえば,BがAからお金を借りるときにBが所有している工場用の機械にAのための譲渡担保を設定するわけである。このときにB所有の機械の所有権がAに移転する。このように法形式上所有権を移転することによって担保とする方法が譲渡担保である。

 

(2) 譲渡担保の機能

 

 譲渡担保の機能は,動産につき抵当権と同じような担保を設定することができる,すなわち動産抵当を実現するというところにもっとも重要な意義がある。もちろん不動産についても譲渡担保を設定することは考えられる。

 

(3) 譲渡担保の有効性

 

 この譲渡担保権はそもそも有効なのかという点について議論がなされたことがある。というのは,売買の形をとってはいるが,真の目的は売買ではなく担保にある。したがって,虚偽表示になるのではないかという批判があった。また,質権については,要物性というところから占有改定による質権設定は認められていない(344条,345条)。しかし,譲渡担保はいわば占有改定で質権を設定しているのと同じことになるのではないかという批判があった。さらには,明文の規定がない物権を認めることは物権法定主義(175条)に反するのではないかという問題があった。
 しかし,譲渡担保は経済社会における現実の必要性という観点から慣習上の物権として,今日認められるということについて,ほぼ異論はない。

 

(4) 譲渡担保の法的性質

 

 譲渡担保の問題を考える際に重要な点は,担保目的であるという実質と,法形式上は所有権を移転しているという形式にずれがあることである。この実質的な目的と法形式のずれにおいて,担保目的という実質に引き寄せて考えるのか,譲渡・所有権の移転という法形式に引き寄せて考えるのかによって譲渡担保の法的な性質としては大きく2通りの考え方がある。これを所有権的構成と担保的構成と呼ぶ。

 

① 所有権的構成(大判明治45年7月8日 かつての通説)

 

 譲渡担保権は,第三者に対する関係では目的物の所有権は債権者に移転するとする。しかし,当事者間の内部的関係によって,以下の2種に分けられる。
 ・外部的にのみ所有権が移転する型(「弱い譲渡担保」)
 ・内外ともに所有権が移転する型(「強い譲渡担保」)
 その根拠としては,債権者に所有権が移るという形式に注目しつつ,債務者にも何らかの権能が残っていることを法的構成に反映させることができるからである。
 しかし,「弱い譲渡担保権」と「強い譲渡担保権」のメルクマールは内部的所有権の所在にあるが,内部関係は基本的に当事者の合意によって決まることであり,しかも譲渡担保である限り,いずれも完全な所有権者ではあり得ない。したがって,所有権がいずれかに帰属するという形で処理しようとするこの構成には無理がある。

 

② 担保的構成(通説)

 

 所有権は設定者に存し債権者は担保権を有するにすぎないとする。したがって,債権者は被担保債権の範囲内で,担保目的物についての価値を支配するという物権的地位を有するにすぎない。
 その根拠としては,第一に,担保としての実質を反映させるべきであること。
 第二に,仮に債権者が所有権丸取りを望んでいたとしても,その通りの効果を認めることは無清算特約を認めない民法の態度に反することが挙げられる。
 しかし,あまりに外形とずれ,担保権としての公示に欠けるので,対外的な関係でもこの構成を貫きうるか疑問である。

 さらに,この譲渡担保権の本質をどのように捉えるかについては次のような見解がある。

 

① 二段階物権変動説(鈴木)

 

 目的物の所有権は一応債権者に移るが,設定者のもとには,所有権マイナス担保権の物権的権利(設定者留保権)が残っていて,いわば所有権か両者に分属するとする。
 その根拠としては,所有権移転の形式を一応尊重しつつ,担保としての実質を考慮することにある。
 しかし,動産譲渡担保の場合には,設定者のもとに占有が残るので留保の状態が認識しやすいが,不動産譲渡担保の場合は設定者留保権が公示され得ず,動産の場合に比して不均衡である。

 

② 授権説(浜上)

 

 設定者が債権者に対し,担保目的の範囲内で目的物の保管処分権限を付与するものとする。

 

③ 物権的期待説(川井,竹内)

 

 譲渡担保の設定により,担保権者には所有権が,設定者には物権的期待権が帰属するものとする。

 

④ 抵当権説(米倉)

 

端的に私的実行の可能な抵当権とする。この点についての判例を紹介する。

 

① 最判昭和41年4月28日 民集第20巻4号900頁

 原審が確定した事実によれば,昭和三四年一二月二五日本件更生手続開始当時,本件物件の所有権は,訴外深田木材株式会社(更生会社)と上告会社間の譲渡担保契約に基づき,上告会社に移転していたが,右所有権の移転は確定的なものではなく,両会社間に債権債務関係が存続していたものである。かかる場合,譲渡担保権者は,更生担保権者に準じてその権利の届出をなし,更生手続によってのみ権利行使をなすべきものであり,目的物に対する所有権を主張して,その引渡を求めることはできないものというべく,すなわち取戻権を有しないと解するのが相当である。されば,上告会社の本訴引渡請求を認容しなかつた原審究極の判断は正当である。

 

② 最判昭和57年9月28日 集民第137号255頁

 

 譲渡担保は,債権担保のために目的物件の所有権を移転するものであるが,右所有権移転の効力は債権担保の目的を達するのに必要な範囲内においてのみ認められるのであって,担保権者は,債務者が被担保債務の履行を遅滞したときに目的物件を処分する権能を取得し,この権能に基づいて目的物件を適正に評価された価額で確定的に自己の所有に帰せしめ又は第三者に売却等することによって換価処分し,優先的に被担保債務の弁済に充てることができるにとどまり,他方,設定者は,担保権者が右の換価処分を完結するまでは,被担保債務を弁済して目的物件についての完全な所有権を回復することができるのであるから(最高裁昭和三九年(オ)第四四〇号同四一年四月二八日第一小法廷判決・民集二〇巻四号九〇〇頁,同昭和四二年(オ)第一二七九号同四六年三月二五日第一小法廷判決・民集二五巻二号二〇八頁,同昭和五五年(オ)第一五三号同五七年一月二二日第二小法廷判決・民集三六巻一号九二頁参照),正当な権原なく目的物件を占有する者がある場合には,特段の事情のない限り,設定者は,前記のような譲渡担保の趣旨及び効力に鑑み,右占有者に対してその返還を請求することができるものと解するのが相当である。

 

(5) 譲渡担保の対内的効力(譲渡担保権者と設定者の関係)

 

① 設定者の使用・収益

 

 譲渡担保の最大の利点は,設定者が抵当権と同様に使用・収益を続けられるという点にある。すなわち,動産について抵当権を設定したのと同様の効力がある。

 

② 効力の及ぶ範囲

 

 まず,被担保債権の範囲は,法律の規定がないので,当事者間でなされた譲渡担保設定契約によって定まる。
 次に,目的物の範囲は,付加物・従物・従たる権利についてそれぞれ抵当権と同様の議論が妥当することになる。
 また,譲渡担保について物上代位(304条)の規定の趣旨が及ぶかについては,一般に肯定されている。

 

最判平成11年5月17日 民集第53巻5号863頁

 

一 本件は,信用状発行銀行において,輸入業者が破産宣告を受けた後,輸入商品に対する譲渡担保権に基づく物上代位権の行使として,輸入業者が転売した輸入商品の売買代金債権の差押えを申し立てた事案である。記録によれば,本件の経過は次のとおりである。
 1 協光株式会社は,相手方との間で,信用状取引についての基本約定を締結し,同取引によって負担する債務を担保するため,相手方に対し輸入商品等に譲渡担保権を設定する旨を合意した。
 2 相手方は,協光が後記債権差押命令添付の商品目録記載の各商品(以下「本件商品」という。)を輸入するについて信用状を発行し,平成九年一〇月二四日から同月三〇日までの間に,協光に対し,米ドル建て約束手形三通(邦貨換算による手形金額合計一〇九二万四三七一円)の振出しを受ける方法により,輸入代金決済資金相当額を貸し付けた。
 3 相手方は,右各貸付けをするのに伴い,協光から,右約束手形金債権の担保として,各対応する本件商品に譲渡担保権の設定を受けた上,協光に対し,本件商品の貸渡しを行い,その処分権限を与えた。
 4 協光は,平成九年一〇月二四日から同年一一月一一日までの間に,松下産業株式会社に対し,本件商品を売渡した。
 5 協光は,平成九年一〇月三〇日,破産の申立てをし,同年一一月一二日,破産宣告を受け,抗告人がその破産管財人に選任された。協光は,右破産の申立てをしたことにより,相手方との銀行取引約定に基づき,前記約束手形金債務について期限の利益を失った。
 6 相手方は,平成九年一二月九日,前記約束手形金債権を被担保債権とし,譲渡担保権に基づく物上代位権の行使として,協光の松下産業に対する本件商品の売買代金債権の差押えを申し立てた。大阪地方裁判所は,同月一〇日,相手方の申立てを認め,譲渡担保権に基づく物上代位として,債権差押命令を発付した。

二 右の事実関係の下においては,信用状発行銀行である相手方は,輸入商品に対する譲渡担保権に基づく物上代位権の行使として,転売された輸入商品の売買代金債権を差し押さえることができ,このことは債務者である協光が破産宣告を受けた後に右差押えがされる場合であっても異なるところはないと解するのが相当である。

 

③ 清算方法

 

 譲渡担保は担保権であるから,当然優先弁済権が認められる。しかし,優先弁済を受ける方法として処分清算型と帰属清算型の2タイプがある。
 処分清算型とは,債務不履行が生じたときに目的物を売却してその売却代金から優先弁済を受けるという方法をとらなければならないものである。
 帰属清算型とは,債務不履行が生じたときに,担保目的物を直接,譲渡担保権者が自分の所有物にしてしまって優先弁済を受けたことにするというものである。
 ちなみに,清算金の支払と,目的物の引渡は同時履行の関係(引換給付の関係)となるとするのが判例である。
 ただ,いずれの方式によったとしても,譲渡担保権者には清算義務があるとするのが判例である(最判昭和46年3月25日 民集第25巻2号208頁)ため,目的物と被担保債権の差額は清算金として設定者に支払わなければならない。

 

(6) 譲渡担保の対外的効力(譲渡担保の当事者と第三者の関係)

 

① 譲渡担保設定者が目的物を第三者に譲渡した場合

 

 譲渡担保の法的構成について所有権的構成を採用した場合は,目的物の所有権は譲渡担保権者に移転しているので,設定者が処分した場合は他人物売買となる。したがって,目的物(動産)の譲受人は即時取得によって保護されない限り,所有権を取得できないということになる。
 それに対して,担保的構成を採用した場合は,設定者のもとには譲渡担保の負担付きの所有権が残っているので,第三者はこれを取得することができる。つまり,他人物売買にはならない。さらに,この場合の第三者が,即時取得の要件を充たしていれば,譲渡担保権の負担のない目的物の所有権を取得することになる。

 

② 債務者の一般債権者が譲渡担保の目的物を差し押さえた場合

 

 所有権的構成を採用した場合は,譲渡担保権者は自らの所有権に基づいて第三者意義の訴え(民事執行法38条)を主張することができる。第三者異議の訴えというのは,強制執行がなされた場合に差し押さえた物について所有権を有する者が,債務者の所有物でないので返還してもらいたい,と異議を申し立てる制度である。すなわち,目的物の所有者に存する権利である。所有権的構成の場合は,譲渡担保権者が所有者となっているので,このような第三者異議の訴えが可能になる。
 それに対して,担保的構成の場合には,譲渡担保権者は担保権しか有していないのであり,所有権を有しない譲渡担保権者は第三者異議の訴えは提起できないとするのが理論上の帰結である。しかし,現行法上,優先弁済の訴えというものが認められていないため,便宜上第三者異議の訴えを使うしかないと解されている。

 

③ 譲渡担保権者側が目的物を処分した場合

 

 譲渡担保権者が目的物を自己の物として処分した場合について,所有権的構成を採用した場合は,所有物を売り渡したというだけであり,債権的にも物権的にも有効な売買契約がなされたということになる。
 それに対して,担保的構成を採用した場合は,譲渡担保権者に所有権はないので,他人物売買となり,債権的にはもちろん有効であるが,物権的には(所有権が移転するかどうかということ)譲受人は所有権を取得しないのが原則である。しかし,この場合も,譲受人が即時取得の要件を備えていれば動産であれば即時取得でき,不動産の場合については,94条2項類推適用による外観法理により保護される可能性はある。

 

④ 譲渡担保権者側が弁済期到来後に譲渡した場合

 

 処分清算型の場合は,まさに第三者への処分となり,受戻権は消滅することになる。受戻権とは,債務者が弁済期到来後に借金を返済できないとき,譲渡担保権が実行されてしまうが,その譲渡担保権の実行前に被担保債権の全額を支払うことによって目的物を取り戻すことができる権利のことをいう。
 帰属清算型の場合は,債権者が債務者に対して清算金の支払またはその提要をするまでの間は受戻しをすることができるのであるが,第三者に処分された場合は,当然に受戻権は消滅する。

 

⑤ 弁済後に目的物が譲渡された場合

 

 所有権的構成をとった場合は,被担保債権を債務者が弁済したのであるから,本来その所有権は設定者のもとに戻ってくるはずである。にもかかわらず譲渡担保権者がそれを第三者に譲渡したのであるから,譲渡担保権者を起点とした二重譲渡に似た関係になる。不動産であれば177条,動産であれば178条によって対抗要件の有無によって解決を図ることになる。
 担保的構成をとった場合は,譲渡担保権者はそもそも所有権を有しないのであるから,譲受人は他人物を買った(他人物売買)ということになり,即時取得(動産)か94条2項類推適用(不動産)で解決する方法が残されているのみである。

 

(7) 流動動産譲渡担保

 

 譲渡担保は,機械に譲渡担保権を設定するというような場合のほか,倉庫に保管されている部品全部について譲渡担保権を設定するというように集合動産に譲渡担保を設定する場合がある。しかも,その倉庫の中の部品というのは,絶えず新しいものが入っては出て行くわけであるから,入れ替わりがある。これを流動動産の担保物権という。そもそもこのようなものが認められるかが問題となる。というのは,譲渡担保権も物権であるから,その目的物は特定していなければならないが,流動動産の場合は常に目的物が変化するため,特定されないのではないかという点が問題となる。

 

① 分析的立場

 

 集合物の個々の物の上に譲渡担保が成立するとする。
 その根拠としては,第一に,個々の動産が,集合体に入ることを停止条件として譲渡担保の目的物となり,出ることを解除条件として譲渡担保の目的物ではなくなるという契約が存在すると捉えることができること。
 第二に,通常の動産譲渡担保一般の問題に解消して説明できることが挙げられている。
 しかし,あまりに技巧的で当事者の意思に合致しない。

 

② 集合物論的構成(判例)

 

 一個の集合物それ自体の上に譲渡担保が成立するとする。集合物全体について対抗要件(占有改定)があればよく,個々の構成物は,集合体に入ることで目的物となって対抗要件が及び,出ることで譲渡担保の拘束から解放されることになる。

 

③ 最判昭和62年11月10日 民集第41巻8号1559頁

 

 原審の適法に確定した事実関係は,(一)被上告会社は,昭和五〇年二月一日,丸喜産業株式会社(以下「訴外会社」という。)との間で,大要次のような根譲渡担保権設定契約(以下「本件契約」という。)を締結した,(1)訴外会社は,被上告会社に対して負担する現在及び将来の商品代金,手形金,損害金,前受金その他一切の債務を極度額二〇億円の限度で担保するため,原判示の訴外会社の第一ないし第四倉庫内及び同敷地・ヤード内を保管場所とし,現にこの保管場所内に存在する普通棒鋼,異形棒鋼等一切の在庫商品の所有権を内外ともに被上告会社に移転し,占有改定の方法によって被上告会社にその引渡を完了したものとする,(2)訴外会社は,将来右物件と同種又は類似の物件を製造又は取得したときには,原則としてそのすべてを前記保管場所に搬入するものとし,右物件も当然に譲渡担保の目的となることを予め承諾する,(二)被上告会社は訴外会社に対し,普通棒鋼,異形棒鋼,普通鋼々材等を継続して売り渡し,昭和五四年一一月三〇日現在で三〇億一七八七万〇三一一円の売掛代金債権を取得するに至った,(三)訴外会社は,上告会社から第一審判決別紙物件目録記載の異形棒鋼(以下「本件物件」という。)を買受け,これを前記保管場所に搬入した,(四)本件物件の価額は五八五万四五九〇円である,(五)上告会社は,本件物件につき動産売買の先取特権を有していると主張して,昭和五四年一二月,福岡地方裁判所所属の執行官に対し,右先取特権に基づき,競売法三条による本件物件の競売の申立(福岡地裁昭和五四年(執イ)第三二六五号)をした,というのである。
 ところで,構成部分の変動する集合動産であっても,その種類,所在場所及び量的範囲を指定するなどの方法によって目的物の範囲が特定される場合には,一個の集合物として譲渡担保の目的とすることができるものと解すべきであることは,当裁判所の判例とするところである(昭和五三年(オ)第九二五号同五四年二月一五日第一小法廷判決・民集三三巻一号五一頁参照)。そして,債権者と債務者との間に,右のような集合物を目的とする譲渡担保権設定契約が締結され,債務者がその構成部分である動産の占有を取得したときは債権者が占有改定の方法によってその占有権を取得する旨の合意に基づき,債務者が右集合物の構成部分として現に存在する動産の占有を取得した場合には,債権者は,当該集合物を目的とする譲渡担保権につき対抗要件を具備するに至り,この対抗要件具備の効力は,その後構成部分が変動したとしても,集合物としての同一性が損なわれない限り,新たにその構成部分となった動産を包含する集合物について及ぶものと解すべきである。したがって,動産売買の先取特権の存在する動産が右譲渡担保権の目的である集合物の構成部分となった場合においては,債権者は,右動産についても引渡を受けたものとして譲渡担保権を主張することができ,当該先取特権者が右先取特権に基づいて動産競売の申立をしたときは,特段の事情のない限り,民法三三三条所定の第三取得者に該当するものとして,訴えをもって,右動産競売の不許を求めることができるものというべきである。
 これを本件についてみるに,前記の事実関係のもとにおいては,本件契約は,構成部分の変動する集合動産を目的とするものであるが,目的動産の種類及び量的範囲を普通棒鋼,異形棒鋼等一切の在庫商品と,また,その所在場所を原判示の訴外会社の第一ないし第四倉庫内及び同敷地・ヤード内と明確に特定しているのであるから,このように特定された一個の集合物を目的とする譲渡担保権設定契約として効力を有するものというべきであり,また,訴外会社がその構成部分である動産の占有を取得したときは被上告会社が占有改定の方法によってその占有権を取得する旨の合意に基づき,現に訴外会社が右動産の占有を取得したというを妨げないから,被上告会社は,右集合物について対抗要件の具備した譲渡担保権を取得したものと解することができることは,前記の説示の理に照らして明らかである。そして,右集合物とその後に構成部分の一部となった本件物件を包含する集合物とは同一性に欠けるところはないから,被上告会社は,この集合物についての譲渡担保権をもって第三者に対抗することができるものというべきであり,したがって,本件物件についても引渡を受けたものとして譲渡担保権を主張することができるものというべきであるところ,被担保債権の金額及び本件物件の価額は前記のとおりであって,他に特段の事情があることについての主張立証のない本件においては,被上告会社は,本件物件につき民法三三三条所定の第三取得者に該当するものとして,上告会社が前記先取特権に基づいてした動産競売の不許を求めることができるものというべきである。

 

3.売渡担保

 

 売渡担保とは,債権担保のため物の所有権(あるいはその他の財産権)を法律形式上債権者に譲渡して,信用授受の目的を達するもので,信用授受を売買の形式によって行い,債権・債務関係を残さないものをいう。
 具体的には,買戻し,再売買予約という形がとられる。ただし,買戻しについては原則として目的物が不動産に限られる(579条前段)。
 買戻しとは,売買契約の際の特約によって,売主が代金額及び契約の費用を買主に返還することによって売買契約を解除し,目的物を取り戻すことをいう(579条以下)
 再売買予約とは,債務者の物の所有権を担保の目的で債権者のもとにいったん移転し,債務の弁済がなされると予約完結権が行使されて,再売買という形で買い戻されるものをいう。

 

4. 仮登記担保

 

(1) 意義

 

 仮登記担保とは,金員の交付に際し,貸金の回収が不可能となる場合に備えて,債務者もしくは第三者(物上保証人)の所有権(多くの場合不動産)を債権者に移転させ,それによって本来の債務の履行に代える旨を約し,債権者が有する期待権を仮登記又は仮登録によって保存する形式の担保をいう。
 譲渡担保は担保設定時にあらかじめ所有権を移転するという形をとるのに対し,仮登記担保は弁済がない場合に所有権を移転する形をとる点で異なる。

 

(2) 仮登記担保の法的性質

 

 抵当権に近い担保物権の性質を有する。したがって,可能な限り抵当権の規定を類推適用する。付従性・随伴性・不可分性・物上代位性等を有する(判例)。

 

(3) 仮登記担保の設定

 

① 「仮登記担保契約」の要件(仮登記担保法1条)

 

 担保を目的とすること
 金銭債務を担保すること
 債務不履行があるとき,所有権その他の権利(地上権・賃借権等)を債権者に移転することを内容とするものであること
 仮登記・仮登録できるものであること

 

② 公示方法

 

 仮登記・仮登録によって公示する。この場合の仮登記(仮登録もこれに準ずる)を「仮登記」という(仮登記担保法4条1項,20条)。本来仮登記には順位保全の効力のみが認められ対抗力は認められないが,担保仮登記は優先弁済権の本登記としての効力をも有していると解される。

 

(4) 仮登記担保権の効力

 

 弁済がなされない場合に,①目的物不動産の所有権を取得するか(競売によらない私的実行),②優先弁済を受けること(競売による優先弁済)をその中心とする。

 

(5) 仮登記担保法による私的実行

 

 私的実行とは,端的には仮登記を本登記にして目的不動産を自己のものにすることである。

 

① 私的実行の開始

 

 被担保債権の債務者が履行遅滞に陥り,仮登記担保契約で定められた所有権移転の要件をみたした場合に開始される。

 

② 所有権の取得(仮登記担保2条1項)

 

 債権者が債務者に対して清算金の見積額を通知し,その通知が到達してから2ヵ月後に所有権移転の効力が生じる。

 

③ 債務消滅・受戻

 

 所行権の移転によって被担保債権は目的物価額の限度で消滅する(仮登記担保法9条)。
 清算金の支払を受けるまでは,設定者は,債務が消滅しなかったならば支払うべきであった金額を債権者に提供して所有権の受戻を請求できる。ただし,清算期間が経過した時から5年後又は第三者が所有権を取得した場合は,受戻をすることができない(仮登記担保法11条)。

 

④ 清算(仮登記担保法3条1項)

 

 担保権者は清算金(清算期間経過時の目的物価額と被担保債権額の差額)を設定者(第三取得者や後順位担保権者がいる場合も同様)に支払わなければならない。

 

(6) 仮登記担保法による私的実行

 

 通常の担保権と同様の原因により消滅する。たとえば,弁済・時効等による被担保債権の消滅,目的物の競売(仮登記担保法16条1項),目的物の滅失などで消滅する。

 

5.所有権留保

 

(1) 意義

 

 売主が目的物の引渡しを終えつつ,代金が完済されるまで目的物の所有権を留保する制度をいう。目的物の売買契約中に,売主から買主への所有権移転を代金完済まで留保するという特約を付けることによって行われる。
 所有権留保は初めから債権者が所有権を有している点で,債務者の有する所有権を債権者に移転する譲渡担保とは異なる

 

(2) 法律構成

 

 譲渡担保と同様の対立がある。

 

(3) 対内的効力

 

 買主は実質的所有者であるから,特約によって制限されていない限り自由に使用・収益することができる。特約がある場合の特約違反は,留保所有権実行の理由になりうる。
 目的物が買主に引き渡された後に滅失・損傷した場合には,買主に帰責事由のない場合であっても,買主は代金債務を免れない(危険負担:534条)。滅失・損傷につき買主に帰責事由がある場合や買主が善意の第三者に目的物を処分して留保所有権を消滅させた場合には,買主は不法行為責任を負う。買主が善管注意義務を負う旨の特約がある場合には,債務不履行責任も負う。

 

(4) 対外的効力

 

① 売主と買主側の第三者

 

 所有権的構成に立てば,買主は無権利者であるから,相手方が即時取得(192条)した場合にのみ売主は所有権を失う。
 担保的構成に立てば,買主は所有者であるから,相手方は所有権を買主から承継取得する。相手方が留保所有権の存在につき善意・無過失である場合には,所有権留保のつかない所有権を取得することになる。

 

② 買主と売主当事者側の第三者

 

 所有権的構成に立てば,売主は第三者に所有権を譲渡できる。担保的構成に立てば,留保所有権を被担保債権とともに処分できる。ちなみに,買主が目的物を直接占有しているため,売主が目的物を第三者に処分することは通常考えられない

 

6.代理受領

 

 代理受領とは,債務者が第三債務者に対して有する債権について,債権者が取立てないし受領の委任を受け,債権者は第三債務者から受領した金銭を債務者に対する債権に充足することにより,他の債権者に優先して債権を回収することをいう。
 構造的には債務者の第三債務者に対する債権を債権者に譲渡ないし質入することと何ら変わりはない。
 債権者Bと債務者Aの間には,債権の弁済受領に関する委任関係が成立する。弁済の受領等,委任の内容に反する行為がなされれば,Aは民法137条2号の担保毀滅行為として期限の利益を失う(通説)。
 債権者Bと第三債務者との間では,法形式的には,Bは弁済受領権限をもつのみで,直接取立権を有しない(判例)。債権債務関係はあくまで債権者Bと第三者の間にあるからである。

 

以上

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