宅地建物取引士になる方法
宅地建物取引士(以下、「取引士」と略す)になるにはどうすればいいの?
試験に合格した後、登録して、取引士証の交付を受けて下さい。
前回の記事で、宅建業の免許を取得するためには事務所や契約をするような案内所等には一定数の専任の取引士を設置しなければならないことを説明しました。今回は、取引士になるための方法と手続きと、取引士になれたら何ができるようになるのかを説明します。
試験を受けずに取引士になれますか?
なれません。年に1度実施される「宅建試験」に合格しなければ取引士にはなれません。ただし、宅建業者に勤務する方は、国が認めている一部の機関が実施する「登録講習」を受講して「修了試験」に合格すれば、試験問題の一部が免除されます。
宅建試験に合格したらすぐに取引士になれますか?
なれません。試験に合格した後に、受験した都道府県の知事に対して取引士の登録を行わなければなりません。この登録を受けるには2つの条件を満たす必要があります。一つは、2年以上の宅地建物取引業の実務経験があることです。この条件を満たさない方は、登録実務講習を受講して修了試験に合格することで登録できるようになります。もう一つは、欠格事由に該当しないことです。宅建業法18条1項に詳細な欠格事由が定められています。未成年者や成年被後見人・被保佐人でないことや、破産者でないことや、過去5年以内に犯罪の前科がないことなどが定められています。ただし、未成年者は、婚姻や親権者の許可により成年者と同一の行為能力を有するようになれば登録することができます。
登録したら取引士ですか?
違います。登録先の都道府県知事に取引主任者証の交付申請をしてその交付を受けなければなりません。交付を受ける際は、都道府県知事が国土交通省令の定めるところにより指定する「法定講習」で交付の申請前6か月以内に行われるものを受講しなければなりません。ただし、宅建試験に合格した日から1年以内に取引主任者証の交付を受けようとする場合は、法定講習の受講が免除されます。
取引士になったら何ができるようになるの?
取引士が行わないと処罰の対象となる行為が3つあります。①重要事項説明をすること、②重要事項説明書面に記名押印すること、③不動産の売買契約書等に記名押印することです。
この点についての詳細はまた別の機会にご説明します。
今日のポイント
取引士になるには、①宅建試験に合格すること、②合格した都道府県の知事に登録すること、③登録先の知事から取引士証の交付を受けることが必要。
取引士になれば、①重要事項説明、②重要事項説明書面に記名押印、③不動産の売買契約書等に記名押印ができるようになる。
(過去問にチャレンジ!)
【問 題】 宅地建物取引業法(以下この問において「法」という。)に規定する取引士及び宅地建物取引士証(以下この問において「取引士証」という。)に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。(平成23年度 問28)
- 宅地建物取引業者は、20戸以上の一団の分譲建物の売買契約の申込みのみを受ける案内所を設置し、売買契約の締結は事務所で行う場合、当該案内所には専任の取引士を置く必要はない。
- 未成年者は、成年者と同一の行為能力を有していたとしても、成年に達するまでは取引士の登録を受けることができない。
- 取引士は、法第35条の規定による重要事項説明を行うにあたり、相手方から請求があった場合にのみ、取引士証を提示すればよい。
- 宅地建物取引士資格試験に合格した日から1年以内に取引士証の交付を受けようとする者は、登録をしている都道府県知事の指定する講習を受講する必要はない。
正解 : 4
- × 宅建業者が、契約行為等を行うことを予定する、10戸以上の一団の建物の分譲について案内所を設置して行う場合、を設置する場合には、成年者である専任の取引士を、少なくとも1人以上置かなければなりません。
- × 未成年者であっても、宅建業に係る営業に関し成年者と同一の行為能力を有していれば、取引士の登録を受けることができます。
- × 取引士が重要事項説明をするときは、説明の相手方に対し、取引士証を提示しなければなりません。相手方から請求がなくても必ず提示しなければなりません。
- 〇 取引士証の交付を受けようとする者は、登録をしている都道府県知事が国土交通省令の定めるところにより指定する講習で交付の申請前6月以内に行われるものを受講しなければならないのが原則です。しかし、試験に合格した日から1年以内に取引士証の交付を受けようとする者については、受講する必要がありません。試験に合格して間もない人は最新の法律知識を有しているからです。
この記事は2014年4月28日の「全国賃貸住宅新聞」に掲載したものです。
※ 法改正により、取引主任者を取引士に名称変更しております。