田中嵩二の宅建士&賃貸管理士試験ブログ

宅建士試験&賃貸不動産経営管理士試験の受験に役立つ情報を提供します。

実務でよく活用される債務引受は民法に規定されているの?

Q.実務でよく活用される債務引受は民法に規定されているの?

 

A.現行民法に規定はありません。

 

平成28年度宅建試験に出題された問題をピックアップして解説して行きます。

 

2016年度試験の問1は民法改正案からの出題

平成27年3月31日、民法改正法案(以下、改正案と略す。)が2015年通常国会に提出されたことは周知の事実です。現在も衆議院で審査中です。今年の宅建士試験の問1ではこの民法改正案から出題されました。民法の条文に規定されているか否かという出題形式で、現行民法に規定があるものが1つ、改正案で創設された条文が3つ並ぶものでした。昨年と一昨年の試験で明らかに改正案から出題されていることがわかっていたので、予想通りの出題でした。ただ、特別な対策を取っていない受験者にとったら難問であったと思われます。

 

債務引受について大幅な変更点があるの?

ありません。実は、実務でよく活用されている債務引受について現行の民法には規定がありません。学説と判例で規範がつくられそれに従って取引されているのが現状です。改正民法ではこの点を民法の条文に明記して交通整理を行う予定です。ちなみに、債務引受とは、狭い意味では、B(旧債務者)がA(債権者)に対して負っている債務をCが引き受けてAに対する債務者となることをいいます。Bがこれにより債務を免れる契約を免責的債務引受といい、Bの債務を存続させながら新たにCが債務を負う契約を併存的債務引受といいます。オーナーチェンジした際の保証金の返還債務を引き継いだり、抵当権が付いている不動産を購入する際に残っている借金も引き継ぐような場合です。

 

敷金について大幅な変更点があるの?

ありません。実務では普通に活用されている敷金についても現行の民法にはほとんど規定がありません。敷金についても判例と学説でその規範がつくられ、それに従って賃貸借契約が行われているのが現状です。改正民法では、新たに第四款「敷金」という項目が作られ、これまでの判例法理が条文に明記されます。具体的には、改正民法622条の2の第一項には、「賃貸人は、敷金(いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭をいう。以下この条において同じ。)を受け取っている場合において、次に掲げるときは、賃借人に対し、その受け取った敷金の額から賃貸借に基づいて生じた賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務の額を控除した残額を返還しなければならない。一賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたとき。二賃借人が適法に賃借権を譲り渡したとき。」と定められ、第二項には、「賃貸人は、賃借人が賃貸借に基づいて生じた金銭の給付を目的とする債務を履行しないときは、敷金をその債務の弁済に充てることができる。この場合において、賃借人は、賃貸人に対し、敷金をその債務の弁済に充てることを請求することができない。」と定められました。また、判例法理として定着していた「賃貸人たる地位が移転した場合に敷金返還債務及び費用償還債務が譲受人に移転する」旨も改正民法605条の2第4項に定められています。

 

法定利率について大幅な変更点があるの?

大きく変わる予定です。現行の民法では、利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利息は年五分とする旨が定められています(法定利率、404条)。法定利率とは、利息が契約で定められていない場合や、利息が法律の規定によって発生する場合に適用されることをいいます。金銭債務の不履行における損害賠償などは後者の典型例です。改正民法では、市場金利が低金利で推移する現状において法定利率が不合理に高率であることや、フランス・ドイツ等で変動制が採用されている状況を踏まえ、5%から3%に引き下げた上で変動制を採用しています。なお、商法では法定利率は6%とされていますが、これも改正民法が施行された際には廃止され、民法の法定利率に一本化されます。

 

(2016年度の問題にチャレンジ!)

【問 1】 次の記述のうち、民法の条文に規定されているものはどれか。

  1. 利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、年3%とする旨
  2. 賃貸人は、賃借人が賃貸借に基づく金銭債務を履行しないときは、敷金をその債務の弁済に充てることができる旨
  3. 免責的債務引受は、債権者と引受人となる者との契約によってすることができる旨
  4. 契約により当事者の一方が第三者に対してある給付をすることを約したときは、その第三者は、 債務者に対して直接にその給付を請求する権利を有する旨

 

解答:4

 

  1. × 民法の条文に規定されていません。現行の民法には「利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、年五分とする」と規定されています。問題文の規定は、2016年3月31日に国会に提出された民法の一部を改正する法律案404条に規定されています。
  2. × 民法の条文に規定されていません。2016年3月31日に国会に提出された民法の一部を改正する法律案622条の2が新設され、問題文の規定を含む、敷金に関する詳細な規定が定められました。
  3. × 免責的債務引受については現行民法に規定がありません。問題文の規定は、2016年3月31日に国会に提出された民法の一部を改正する法律案472条2項に規定されています。
  4. 〇 現行民法537条1項に規定されています。本条は第三者のためにする契約についての定めです。これは、契約の当事者が、自己の名において結んだ契約によって、当事者以外の第三者に対して直接に権利を取得させることを内容とする契約をいいます。

 

 

ken-bs.co.jp

 

Kenビジネススクール公式サイト

〒160-0022 東京都新宿区新宿2-5-12 FORECAST新宿AVENUE4F

電話:03-6685-8532 Email : info@ken-bs.co.jp