田中謙次の宅建試験ブログ

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心裡留保の改正

心裡留保の改正

平成27年3月31日 民法の一部を改正する法律案が後の宅建士試験に与える影響について定期的に解説します。

 

新旧対照条文

現行

心裡留保
第九十三条
意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。ただし、相手方が表意者の真意を知り、又は知ることができたときは、その意思表示は、無効とする。

 

改正案

心裡留保

第九十三条
意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。ただし、相手方がその意思表示が表意者の真意ではないことを知り、又は知ることができたときは、その意思表示は、無効とする。
2 前項ただし書の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。

 

改正案の内容

民法93条の心裡留保について改正案が国会に提出されています。

審議の過程では、心裡留保を二種に分ける案が出されていました。一つは、表意者が相手方を誤信させる意図を持って自己の真意を秘匿し真意と異なる意思表示をする場合(狭義の心裡留保)です。つまり嘘です。もう一つは、相手方が真意と異なる ことに気付いてくれることを期待して行う場合(非真意表示)です。つまり冗談です。狭義の心裡留保のときは相手方が悪意であるときだけ無効とし、非真意表示のときは悪意だけでなく過失があるときも無効とする案が主張されていましたが、両者を区別することが困難である等の批判があり、今回の改正案から除外されました。

 

現行の規定では、心裡留保の意思表示は、相手方が「表意者の真意」を知り又は知ることができたときは無効であるとされています(民法第93条ただし書)。しかし、表意者の真意の内容を知らない場合であっても、表意者の意思表示が真意と異なることを知り、又は知ることができる場合には、相手方を保護する必要がないと考えられます。そこで、「表意者の真意ではないことを知り、又は知ることができたときに無効」と変更されました。

 

なお、民法第93条は代理人又は代表者による権限の濫用、代表者が意思表示を行うための要件を欠いた場面(最判昭和40年9月22日民集19巻6号1656頁など)に類推適用されており、審議の過程で、同条の改正に当たって同条が類推適用される場面への影響も検討すべきであるとの主張もされていました。しかし、代理人又は代表者による権限濫用や代表者が意思表示を行うための要件を欠く場面については、このような場面では表示と真意の不一致がなく心裡留保とは性質を異にするという理論的な批判のほか、相手方に軽過失があるに過ぎない場合であっても権限を濫用してされた意思表示が無効とされるという結論の妥当性にも批判がありました。そこで、代理権の濫用については、代理の章で別に規定を新設することになりました。

 

また、現行の民法第93条には、民法第94条や第96条と異なり、効力を否定される意思表示を前提として新たに法律上利害関係を有するに至った第三者の保護については規定が設けられていないため、第三者がどのような要件の下で保護されるか、解釈上の疑義が生じていました。
この点について、判例は、心裡留保の意思表示を前提として新たに法律上利害関係を有するに至った第三者について民法第94条第2項を類推適用するとしています(最判昭和44年11月14日民集23巻11号2023頁)。また、同項の「善意」について、善意であれば足り、無過失であることを要しないとしています(大判昭和12年8月10日法律新聞4181号9頁)。
表意者が第三者に対して心裡留保の意思表示の無効を対抗することができるかどうかは、この意思表示が有効なものと扱われることによって権利を失ったり義務を負担したりすることになる表意者と、権利を取得する第三者との利害をどのように調整するかという問題となります。心裡留保の意思表示においては、表意者自身が、その意思表示が真意と異なったものであることを知っており、虚偽の意思表示をしたことについて帰責性が大きいとえいます。これは、表意者自身が内心の意思と異なる表示をしていることを認識している点で、虚偽表示と共通しており、表意者と第三者との利害調整の在り方としても、虚偽表示と同様に扱うのが適当です。虚偽表示と同様に扱うのは、上記昭和44年最判とも整合的です。
そこで、改正案では、表意者が第三者に対して心裡留保による意思表示の無効を対抗することができないための第三者の主観的要件として、民法第94条第2項と同様に、「善意」と定めることとなりました。

 

この点についての審議の過程では、第三者保護要件に無過失も加える案もありました。また、挙証責任を第三者側に転嫁するため原則と例外を逆転させて規定する案もありましたが、これまでの判例法理、虚偽表示や詐欺・強迫との整合性、表意者の帰責性とのバランス等多くの検討され、上記のような規定となりました。

 

宅建試験への影響

宅建試験では10年に1・2回程度の出題頻度です。過去問では、相手方の主観的事情について知識を問うものしか出題されていません。今回新たに2項が付け足され、そこにも善意という主観的要件が定められたので、単純な事例問題として出題される可能性が高いでしょう。

 

 

法務省:民法の一部を改正する法律案

 

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