田中謙次の宅建試験ブログ

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詐欺の改正

詐欺の改正

平成27年3月31日 民法の一部を改正する法律案が後の宅建士試験に与える影響について定期的に解説します。

 

新旧対照条文

現行

(詐欺又は強迫)
第九十六条

1 詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。
2 相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知っていたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。
3 前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意の第三者に対抗することができない。

 

改正案

(詐欺又は強迫)
第九十六条
1 詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。
2 相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知り、又は知ることができたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。
3 前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。

 

改正案の内容

民法第96条第1項は維持されます。

 

審議の過程では、1項の後に新たな項を設けて、相手方のある意思表示において、相手方の代理人が詐欺を行った場合には相手方本人が悪意であるかどうかにかかわらず意思表示を取り消すことができるという判例法理(大判明治39年3月31日民録12輯492頁)を明文化し、相手方から契約締結の媒介の委託を受けた者が詐欺を行った場合にも、同様に、相手方本人が悪意であるかどうかにかかわらず意思表示を取り消すことができる旨を定めるとする案がありましたが、最終的に国会に提出された仮案には明記されませんでした。

 

2項は、第三者による詐欺が行われた場合に表意者が意思表示を取り消すことができるのは、相手方本人が第三者による詐欺を知っていたときだけでなく、知ることができたときも含むとされました。改正の趣旨は、第一に、第三者の詐欺について善意の相手方に対して意思表示を取り消すことができないこととするのは、当該意思表示が有効であるという信頼を保護するためなので、その信頼が保護に値するもの、すなわち相手方が無過失であることが必要であること、第二に、表意者の心裡留保については、相手方が善意であっても過失があれば意思表示が無効とされることとのバランスから、第三者の詐欺による意思表示についても、相手方本人がそれを知ることができたときは取消しが認められるべきであることの2つが主張されています。

 

3項は、詐欺による意思表示を前提として新たに法律関係に入った第三者が保護されるための要件について善意だけでなく、無過失も要件となりました。これは、学説上の多数説です。

法律行為が無効である場合や取り消された場合の第三者保護規定は、通謀虚偽表示、錯誤等においても問題となりますが、第三者が保護されるための要件は一貫した考え方に従って定める必要があります。表意者が権利を失うという効果を正当化するためには第三者の信頼が保護に値すること、すなわち第三者の善意無過失が必要であることを原則としつつ、無効原因、取消原因の性質に応じて検討すべきであるという考え方が示されています。
第三者が保護されるための主観的要件については、その立証責任を表意者又は第三者のいずれが負うのかについても議論があります。第三者が自分の善意(及び無過失)を主張立証しなければならないという考え方が一般的ですが、第三者が悪意であること又は過失があることを表意者が立証しなければならないという考え方もあります。今回の改正によっても、この点について特定の立場を支持するものではなく、立証責任の所在は引き続き解釈に委ねるものとされました。

 

宅建試験に与える影響

詐欺については、宅建試験での超頻出分野です。宅建試験では、強迫との比較、物権変動を伴う取引において取消前後での第三者保護要件の異同についてよく出題されています。今回の改正は、単に相手方、第三者の主観的な要件に「無過失」が付け加わっただけなので、受験対策的にはただそれだけです。事例問題で出題された場合に少しだけわかりにくくする問題を作れそうですが。

なお、強迫については、改正により影響を受けません。すなわち、3項を反対解釈して、善意・無過失の第三者にも取消の主張が可能と解釈されます。

実務的には、普段の職務になんら影響はないでしょう。冗談ですが、詐欺を業としていれば影響ありますが(笑)。ただ、詐欺事件に巻き込まれた場合には、単に知らなかったという主張だけでなく、過失がなかったことも主張・立証する必要がでてくるので、契約書面、重要事項説明や契約書の説明の録音、契約に立ち会った人の肩書、国家資格取得者であればその証明書を提示してもらい写真を撮っておくなど、取引にあたり慎重に行動した旨をあとで証明しやすくするとよいと思います(滅多にないリスクのためにここまでやるのはあれですが、重要な不動産の購入等は一生に何度もないことなのでそこまでしても苦ではないかな)。

 

 

 

法務省:民法の一部を改正する法律案

 

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