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田中謙次の宅建試験ブログ

宅建試験の受験に役立つ情報を提供します。

土地に対する抵当権で、建物が焼失した場合の火災保険金を差し押さえることができる?

Q.土地に対する抵当権で、建物が焼失した場合の火災保険金を差し押さえることができる?

 

A.できません。土地に対する抵当権は建物に及びません。

 

平成28年度宅建試験に出題された問題をピックアップして解説して行きます。

 

不動産を担保にお金を貸す方法は?

AがBにお金を貸していた場合で、もしBがお金を返せなかったときでも、回収する方法として、抵当権という権利(物権)があります。Bがお金を返せなかった場合は、あらかじめ指示していた建物等を、裁判所を通じて売却し(競売)、その代金で、お金を返してもらうというものです。抵当権の便利なところは、抵当権を付けた建物等を、債権者が取り上げないで、建物等の所有者の手元にとどめたままでよいという点です(非占有担保)。また、抵当権を持っている人(抵当権者)は、たとえ、債務者が他からもお金を借りている多重債務者であった場合でも、抵当権の付いた建物等を売却した代金から、優先して弁済を受けられるという点です(優先弁済権)。

 

土地に抵当権を設定した場合は建物も一緒に競売できる?

抵当権の効力の及ぶ目的物の範囲は、原則として、抵当地の上に存する建物を除き、その目的である不動産(抵当不動産)に付加して一体となっている物とされています。たとえば、抵当権設定当時に抵当不動産にあった従物に及ぶとするのが判例です。具体的には、抵当地に対する庭石(取り外しが困難な場合は土地の一部となります)や、ガソリンスタンド用店舗建物に抵当権を設定した場合の地下タンク・洗車機、借地上の建物に抵当権を設定した場合の借地権です。土地に対する建物は従物ではなく、土地に対する抵当権は建物に効力を及ぼさない点は重要です。

 

抵当建物が焼失した場合の保険金に抵当権の効力は及ぶの?

建物に抵当権を設定して、銀行からお金を借りたとしましょう。そしてその建物に火災保険を付けたとします。不幸にも放火にあってその建物が全焼した場合、抵当権設定者(建物所有者)は、火災保険会社に対して保険金を請求する権利と、放火犯人に対して不法行為に基づく損害賠償請求権をもつことになります。ちなみに、抵当権は建物が全焼したことによって消滅します。しかし、この火災を機に抵当権の目的であった建物が、保険金請求権、損害賠償請求権というものに形を変えたと理屈を立てるわけです。抵当権者(銀行)は、この権利を抵当権に基づいて差押えて優先弁済を受ける権利をもつのです。これを物上代位といいます。ただ、物上代位を成功させるためには、支払前に差押えをしなければなりません。法律上は、保険金、損害賠償請求権のほかに、売却代金債権、賃料債権も物上代位の対象となります。物上代位とは、なんらかの理由で目的物(この場合は、抵当権が付いている物のこと)の交換価値が現実化した場合に、その価値代表物に対して抵当権の効力を及ぼすことを認める制度です。交換価値の現実化とは、目的物の交換価値が金銭などに姿を変えた場合のことをいいます。また、抵当権の目的物が価値を維持しつつ姿を変えた目的物のことを価値代表物といいます。抵当権は目的物の交換価値を把握するものなので、目的物に代わる価値の上にも効力を及ぼすことができるわけです。

A所有の土地に一番抵当権者Bと二番抵当権者Cとなっている場合、BCが順位の変更を行うにはAの承諾が必要?

必要ありません。昭和46年の民法改正で根抵当権が創設された際に、民法373条2項3項が追加され、「抵当権の順位は、各抵当権者の合意によって変更することができる。ただし、利害関係を有する者があるときは、その承諾を得なければならない(2項)。前項の規定による順位の変更は、その登記をしなければ、その効力を生じない(3項)。」と定められ(現行民法では347条に移動しています)、複数抵当権者間の抵当権(根抵当権を含みます)の順位の変更が認められました。
その趣旨は、複数の抵当権が設定されている場合に、その順位の変更を簡易な手続で認めようというものです。すなわち、いったん定まった抵当権の順位をのちに変更しようという要求は金融界において強く、従来は、抵当権の処分の規定(たとえば、順位譲渡を何回か繰り返す方法)によってこれを達成するほかなく、この手続は複雑で不便であり、また、その効果についても問題が生じていました。そこで、抵当権の順位の変更の制度が創設されました。
抵当権の順位は、関係抵当権者全員の合意によって変更することができます。たとえば、Aを債務者・抵当権設定者で、B・C・Dが抵当権者である場合、B・C・DをD・B・Cの順位に変更するときはBCBの合意が必要です。なお、B・C・Dの順位のうち、B・Cの順位の変更する場合のDや、C・Dの順位を変更する場合のBは、この順位の変更には関係なく、その合意は不要です。ただし、転抵当権者、被担保債権の差押債権者などの利害関係人がある場合には、その承諾が必要となります。債務者、抵当権設定者、保証人などはここでいう利害関係人にはあたりません。
また、順位の変更は登記をしなければ効力を生じません。登記は対抗要件ではなく効力発生要件とされています。順位の変更の効力は合意の当事者や利害関係人に対してだけでなく、それ以外の者に対しても効力が生じます。

 

抵当権付きの不動産を任意競売したが、3番抵当権者だけが抵当権解除に応じてくれない場合、購入者が採れる手段は?

抵当不動産について所有権を取得した第三者(抵当不動産の第三取得者)は、自己の権利取得代金または自己の指定した金額を、抵当権者に弁済または供託して、抵当権を消滅させることができます(抵当権消滅請求)。抵当不動産の第三取得者は、抵当権消滅請求をするときは、登記をした各債権者に対し、一定の内容を記した書面を送付しなければなりません。また、抵当権の実行としての競売による差押えの効力が発生する前に、抵当権消滅請求をしなければなりません。登記をしたすべての債権者が抵当不動産の第三取得者の提供した代価又は金額を承諾し、かつ、抵当不動産の第三取得者がその承諾を得た代価又は金額を払い渡し又は供託したときは、抵当権は消滅します。抵当権者は、書面送達後2か月以内に抵当権を実行しないと、承諾したものとみなされます。
これは、平成15年の民法改正まであった滌除という制度が廃止された後に作られたものです。滌除抵当権消滅請求と似たような制度だったのですが、いろいろ問題があり、悪用されていたのが実際でした。以前は、任意競売に応じない後順位抵当権者がいた場合、高額なハンコ代(抵当権解除の対価)を要求されることがありました。それは滌除の制度的な不備が原因でした。
第一に、不動産を購入した第三者取得者等は抵当権者に滌除を主張して抵当権を消滅するよう請求できました。しかし、抵当権消滅請求と異なり、滌除を請求された抵当権者は2か月ではなく1か月で競売を申し立てなければなりませんでした。つまり、1か月以内に競売を申し立てなかった場合は、滌除により抵当権が強制的に抹消されてしまうことになっていました。1か月で不動産の鑑定評価を依頼したり競売手続を完了したりするのはかなり困難でした。
第二に、滌除に対抗するためには通常の競売ではなく増価競売という仕組みを利用しなければなりませんでした。増価競売というのは、滌除で提示された金額よりも1割高い価格で競落されることを保証しなければならない特殊な競売手続のことです。たとえば、滌除権者が「800万円で抵当権を解除してください」という請求がなされた場合、抵当権者は880万円以上の価格で競落されることを保証する必要がありました。保証というのは、抵当権者は保証提供保証金として880万円を積み立てなければ競売自体ができなかったのです。さらに、もし880万円以上で競落する者が現れなかった場合は抵当権者自身がその価格で買い受けなければなりませんでした。このハードルはかなり高いものでした。その結果、本来1500万円以上の価値がある不動産であっても、滌除により800万円で抵当権の解除を要求された場合は、880万円の保証金や買受保証ができない場合には、滌除に応じざるを得ないというものでした。
第三に、抵当権消滅請求の場合は、抵当権者による抵当権実行による差し押さえの後はこの請求ができないので、先に抵当権者が差し押さえておけばよいのですが、滌除にはこれができませんでした。また、滌除権者に、滌除を行使する機会を与えるためにその旨の通知を事前に行う必要がありました。そして1か月待たなければ抵当権の実行ができなかったので、その間に滌除を利用されたり、競売の執行妨害のような工作をされることがありました。
第四に、抵当権消滅請求の場合は抵当権付き不動産を購入した所有者のみが主張できるようになっていますが、滌除は所有者以外でも地上権者、永小作者でも利用可能でした。これが悪用されるということはあまりありませんでしたが、所有権よりもハードルの低い地上権取得でも滌除が利用できたわけです。

 

(2016年度の問題にチャレンジ!)

【問 4】 Aは、A所有の甲土地にBから借り入れた3,000万円の担保として抵当権を設定した。この場合における次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

  1.  Aが甲土地に抵当権を設定した当時、甲土地上にA所有の建物があり、当該建物をAがCに売却した後、Bの抵当権が実行されてDが甲土地を競落した場合、DはCに対して、甲土地の明渡しを求めることはできない。
  2.  甲土地上の建物が火災によって焼失してしまったが、当該建物に火災保険が付されていた場合、Bは、 甲土地の抵当権に基づき、この火災保険契約に基づく損害保険金を請求することができる。
  3.  AがEから500 万円を借り入れ、これを担保するために甲土地に Eを抵当権者とする第 2順位の抵当権を設定した場合、BとEが抵当権の順位を変更することに合意すれば、Aの同意がなくても、甲土地の抵当権の順位を変更することができる。
  4.  Bの抵当権設定後、 Aが第三者であるFに甲土地を売却した場合、 FはBに対して、 民法 第 383 条所定の書面を送付して抵当権の消滅を請求することができる。

解答:2

  1. 〇 土地とその上に存する建物が同一の所有者に属する場合において、その土地または建物につき抵当権が設定され、その実行により所有者を異にするに至ったときは、その建物について、地上権が設定されたものとみなされます(民法388条)。土地建物の所有者が土地に抵当権を設定した後、建物を第三者に譲渡した場合にも地上権が成立します。本問の場合、法定地上権が成立するので、DはCに対して甲土地の明け渡しを求めることはできません。
  2. × 抵当権は、その目的物の売却、賃貸、滅失または損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても、行使することができます(民法372条、304条)。「債務者が受けるべき金銭その他の物」とは、目的物の滅失・毀損により抵当権設定者が第三者から受けるべき損害賠償金・保険金のように目的物の全部または一部を直接代表すべきものをいいます。ただし、抵当権は、抵当地の上に存する建物を除き、その目的である不動産に付加して一体となっている物に及ぶので(民法370条)、本問のように、Bが有する抵当権に基づく物上代位権は、抵当土地上の建物に付された火災保険契約に基づく損害賠償請求権には及びません。
  3. 〇 抵当権の順位は、各抵当権者の合意によって変更することができます。ただし、利害関係を有する者があるときは、その承諾を得なければなりません(民法374条)。したがって、BとEの合意で順位の変更ができます。順位が変更されてもAに不利益はないことから、Aの承諾は不要です。
  4. 〇 抵当不動産の第三取得者は、民法第383条所定の書面を送付して、抵当権消滅請求をすることができます(民法379条)。したがって、Fは抵当不動産の第三取得者なので、民法383条所定の書面を送付して抵当権の消滅を請求することができます。

 

 

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