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復代理人を選任した任意代理人の責任(民法105条)の改正

復代理人を選任した任意代理人の責任(民法105条)の改正

平成27年3月31日 民法の一部を改正する法律案が後の宅建士試験に与える影響について定期的に解説します。

 

新旧対照条文

現行

(復代理人を選任した代理人の責任)
第105条  代理人は、前条の規定により復代理人を選任したときは、その選任及び監督について、本人に対してその責任を負う。
2  代理人は、本人の指名に従って復代理人を選任したときは、前項の責任を負わない。ただし、その代理人が、復代理人が不適任又は不誠実であることを知りながら、その旨を本人に通知し又は復代理人を解任することを怠ったときは、この限りでない。

 

法定代理人による復代理人の選任)
第106条  法定代理人は、自己の責任で復代理人を選任することができる。この場合において、やむを得ない事由があるときは、前条第一項の責任のみを負う。

 

(復代理人の権限等)
第107条  復代理人は、その権限内の行為について、本人を代表する。
2  復代理人は、本人及び第三者に対して、代理人と同一の権利を有し、義務を負う。

 

改正案

現行の105条を削除

 

法定代理人による復代理人の選任)

第105条
法定代理人は、自己の責任で復代理人を選任することができる。この場合において、やむを得ない事由があるときは 、本人に対してその選任及び監督についての責任のみを負う。

 

(復代理人の権限等)
第106条
(略)
2 復代理人は、本人及び第三者に対して、その権限の範囲内において、代理人と同一の権利を有し、義務を負う

 

改正案の内容

復代理人を選任した任意代理人が本人に対して負う内部的な責任について、原則として復代理人の選任及び監督の点に軽減される旨を定めている民法105条1項、例外的に更に責任が軽減される旨を定めている同条2項の規定の両方が削除されます。
その理由は、一般の債権者と債務者との関係(例えば売買に基づく目的物引渡債務の債権者である買主と債務者である売主との関係)においては、債権者が債務者に対してその履行を補助する第三者の選任を許諾した場合、債務者がやむを得ない事由によりその履行を補助する第三者を選任した場合(同条1項参照)、さらには債権者の指名に従ってその履行を補助する第三者を選任した場合(同条2項参照)であっても、債務者が自己の債務を履行しないことにより債務不履行責任を負うかどうかは、債務不履行責任の一般原則に従って判断されるのであり、同条の場合にのみ一律に責任が軽減されるとする合理的な理由がないからです。

法定代理人については、現行民法のルールが維持されます。

 

宅建試験に与える影響

宅建試験において、復代理は頻出分野です。高層マンションの建設と分譲等のように複数の業者が介入したり、成年後見人や保佐人等の法定代理人から依頼を受けて不動産を売却したり、不動産の売却の代理権を依頼された弁護士等がさらに業者に契約締結を依頼したり等、数はそれほど多くはないが、実務的にも復代理が問題となる場面があるので出題されるのでしょう。

今回削除された規定自体が、宅建試験では、「これ本当に暗記する必要があるの?」と言わんばかりの重箱の隅を突っつくような問題が出題されていました。という経緯から予測すれば、おそらく改正後も早速出題されるのでしょう。ただ、復代理人を選任した代理人の責任が、債務不履行一般の責任でカバーされることになり、法定代理における復代理はこれまでのルールが維持されるので、問題はかなり作りにくいでしょうね。事例問題を作ると大火傷しそうですし、削除された条文をそのまま問題文にして「誤り」とする問題を作っても、債務不履行一般の規定が適用されるわけだから、必ずしも「誤り」とすることもできない、という反論がすぐでるだろうし。

私なら、A所有の土地の売却をする代理権をBに与えた場合における次の記述・・・として、代理業者であるCを登場させて、選択肢の一つに復代理の知識を問う問題を作るかな。

 

 

法務省:民法の一部を改正する法律案

 

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