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田中謙次の宅建試験ブログ

宅建試験の受験に役立つ情報を提供します。

代理権の濫用規定(民法107条)の新設

代理権の濫用規定(民法107条)の新設

平成27年3月31日 民法の一部を改正する法律案が後の宅建士試験に与える影響について定期的に解説します。

 

新旧対照条文

現行

なし

改正案

 (代理権の濫用)
第107条
代理人が自己又は第三者の利益を図る目的で代理権の範囲内の行為をした場合において、相手方がその目的を知り、又は知ることができたときは、その行為は、代理権を有しない者がした行為とみなす。

 

改正案の内容

改正案107条は、代理権の濫用に関する規律を定めることによって、ルールの明確化を図るものです。

 

代理人Bが相手方Cと間で土地を売買したが、Bがその代金を着服したような場合、本人Aは相手方Cに土地を引渡さなければならないのでしょうか。

 

このような事案を代理人の権限濫用の問題といいます。この場合、Bは無権代理人ではありません。Aから土地を売却する代理権を与えられているからです。Aに渡すはずだった売買代金をBが横領しただけです。また、相手方Cからみても、Aから土地を売却する代理権を有するBと売買契約を結んだというだけです。
さて、この場合、Aは代理人Bのやってしまった着服の責任を負わなければならないのでしょうか。つまり、Cから土地を引渡すように要求されたらそれに応じなければならないのでしょうか。

この点、判例最判昭和42年4月20日民集21巻3号697頁)は、代理権濫用行為について民法93条ただし書を類推適用して解決しています。つまり、代理人が権限濫用したとしても、原則として代理行為は有効であるが、相手方が代理人の意図を知っていたか、知ることができたときには、代理行為は無効となり、本人はその無効を相手方に主張できるとするのです。

 

心裡留保の改正 - 田中謙次の宅建試験ブログ

 

ただ、この判例に対しては、この場合の代理人は代理行為の法律効果を本人に帰属させる意思でその旨の意思表示をしているから、その効果を無効とする理由はないとの指摘がされていました。

そこで、改正案では、無効とする判例の結論を否定し、無権代理行為とみなすとしています。無権代理行為の場合は、無効ではなく、本人への効果帰属の問題となり、かつ、そうすることで、本人に追認の余地を認めることが可能となります。

 

審議の過程では、代理権濫用行為はあくまで代理権の範囲内の行為であり、本人が効果不帰属とする旨の意思表示をすることによって、効果不帰属という効果が生じるという規定も追加することが提案されていました。また、効果不帰属の意思表示は、相手方が代理権濫用の事実(代理人の目的)について悪意又は重過失である場合に限りすることができるとする規定の追加も検討されました。さらに、第三者の保護規定の追加も検討されていました。

 

宅建試験への影響

宅建試験では、前記の昭和42年の最高裁判例が出題されたことはありません。重要な論点でもあるので、直前のヤマ当て講座や予想模試で何度も講義したり作問したりはしていました。ただ、今回のように、改正され、かつ、効果が判例理論と異なり、無権代理とみなされるという大幅な変更があるとなると、出題の可能性が高くなると思われます。 

 

法務省:民法の一部を改正する法律案

 

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