田中嵩二の宅建士&賃貸管理士試験ブログ

宅建士試験&賃貸不動産経営管理士試験の受験に役立つ情報を提供します。

平成29年度宅建試験の出題に影響を与える判例

以下の判例について、後ほどオールアバウトの記事でかみ砕いて説明します。

 

なお、これらの新判例が、今年の宅建試験にどのような形で出題されるかも、ある程度予測できます。予想問題は、弊社開催の宅建盛夏合宿で使用する問題集と講義でお伝えします。

ぜひ、今年の宅建試験の出題予想を知って、短期合格を勝ち取りましょう!

 

 

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平成28年6月3日 民集 第70巻5号1263頁

いわゆる花押を書くことは,民法968条1項の押印の要件を満たさない。

 

平成28年12月1日 民集 第70巻5号1263頁

地上建物に仮差押えがされ,その後,当該仮差押えが本執行に移行してされた強制競売手続における売却により買受人がその所有権を取得した場合において,土地及び地上建物が当該仮差押えの時点で同一の所有者に属していたときは,その後に土地が第三者に譲渡された結果,当該強制競売手続における差押えの時点では土地及び地上建物が同一の所有者に属していなかったとしても,法定地上権が成立する。

 

平成28年12月19日   民集 第70巻8号1793頁

信用保証協会と金融機関との間で保証契約が締結され融資が実行された後に主債務者が中小企業者の実体を有しないことが判明した場合において,上記保証契約の当事者がそれぞれの業務に照らし,上記の場合が生じ得ることを想定でき,その場合に信用保証協会が保証債務を履行しない旨をあらかじめ定めるなどの対応を採ることも可能であったにもかかわらず,上記当事者間の信用保証に関する基本契約及び上記保証契約等にその場合の取扱いについての定めが置かれていないなど判示の事情の下では,主債務者が中小企業者の実体を有することという信用保証協会の動機は,それが表示されていたとしても,当事者の意思解釈上,上記保証契約の内容となっていたとは認められず,信用保証協会の上記保証契約の意思表示に要素の錯誤はない。

 

平成28年12月19日大法廷判決 民集 第70巻8号2121頁

 共同相続された普通預金債権,通常貯金債権及び定期貯金債権は,いずれも,相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく,遺産分割の対象となる。
(補足意見及び意見がある。)

 

 平成29年3月13日

AのXに対する貸金債務についてYがXとの間で保証契約を締結した場合において,YがXから金員を借り受けた旨が記載された公正証書が上記保証契約の締結の趣旨で作成され, 上記公正証書に記載されたとおりYが金員を借り受けたとしてXがYに対して貸金の支払を求める旨の支払督促の申立てをしたとの事情があっても,上記支払督促は,上記保証契約に基づく保証債務履行請求権について消滅時効の中断の効力を生ずるものではない。

 

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亡くなった方の普通預金債権は遺産分割の対象となるの?

Q.亡くなった方の普通預金債権は遺産分割の対象となるの?

 

A.遺産分割の対象となります。

 

平成28年度宅建試験に出題された問題をピックアップして解説して行きます。

 

 

亡くなられた方の財産は誰のもの?

どんなに財産を築いても残念ながら墓場には持っていくことはできません。法的にも、民法上の権利や義務は生まれた時から死ぬときまでしか享有できません。遺された財産の行方については、国によって時代によって異なりますが、現在の日本の制度では、配偶者と一定の血族に引き継がれる仕組みになっています。これを相続といいます。相続とは、相続される人(被相続人)の財産をその者の死後に、法律が特定の者(相続人)に当然に受け継がせる制度をいいます。法律の規定に基づいて生じる相続を法定相続、死亡者の最終意思に基づくものを遺言による相続といいます。
相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継します。父親が死亡した場合、相続人である息子が父親の立場を受け継ぐというようなイメージです。しかし、被相続人の一身に専属した権利(一身専属権)などは承継されません。たとえば、委任者または受任者たる地位や生活保護受給権、扶養請求権、離婚請求権、慰謝料請求権などは相続しません。また、複数の相続人がいる場合、相続財産は相続人全員の共有になります。各共同相続人は、その相続分に応じて被相続人の権利義務を承継します。つまり、共有における持分は相続分と同じとなります。

 

共同相続された普通預金債権等は遺産分割の対象となるの?

前記の通り、相続財産は共同相続人の共有となります。しかし、この共有については古くからその法的性質について解釈上の争いがありました。すなわち、各共同相続人は相続財産を構成する個々の財産上に物権的な持分権を有しこの持分権を遺産分割前も単独で自由に処分できるとする見解(共有説)と、各共同相続人は相続財産全体に対し抽象的な持分を有しこの相続分の処分はできるが相続財産を構成する個別財産上には物権的な持分権はないとされ、また、債権債務も遺産分割までは不可分的に全相続人に帰属し、債務については相続財産がまず責任を負うとする見解(合有説)の対立です。預金債権等の場合、前者からは、遺産分割を待たずに各共同相続人の相続分に応じて当然に分割され、後者からは、分割されずに相続人全員に合有的に帰属し(遺産分割の対象となる)、全員が共同しなければ債務者に請求できないことになります。
これまでの判例は共有説を採用していましたが、2016年12月19日の最高裁大法廷による決定で判例法理が変更され、共同相続された普通預金債権、通常貯金債権及び定期貯金債権は、いずれも、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく、遺産分割の対象となると解釈し、合有説を採用するに至りました。同決定では、預金債権は金銭と同様に遺産分割の調整に活用し得る性質があり、金銭と同じく遺産分割の対象とすべきであるとか、預金口座は給料等の入金や光熱費の引き落とし等その額は解約するまで確定しないことから遺産分割前に自らの相続分について払い戻しが可能であるとすると計算が煩雑になり調整も困難となる等を、判例変更の理由としています。

 

学習のポイント

相続を理解するポイントは次の流れをしっかりと覚えることです。
①相続人の確定、②相続の放棄・承認の確認、③相続分の計算(遺産分割協議)、④土地や建物などの不動産についての登記手続


(過去問にチャレンジ!)

【問 題】 Aが死亡し、それぞれ3分の1の相続分を持つAの子B、C及びD(他に相続人はいない。 )が、全員、単純承認し、これを共同相続した。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。(2003年度問12)
1 相続財産である土地につき、遺産分割協議前に、Bが、CとDの同意なくB名義への所有権移転登記をし、これを第三者に譲渡し、所有権移転登記をしても、CとDは、自己の持分を登記なくして、その第三者に対抗できる。
2 相続財産である土地につき、B、C及びDが持分各3分の1の共有相続登記をした後、遺産分割協議によりBが単独所有権を取得した場合、その後にCが登記上の持分3分の1を第三者に譲渡し、所有権移転登記をしても、Bは、単独所有権を登記なくして、その第三者に対抗できる。
3 相続財産である預金返還請求権などの金銭債権は、遺産分割協議が成立するまでは、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割され、遺産分割の対象とならない。
4 Bが相続開始時に金銭を相続財産として保管している場合、CとDは、遺産分割協議の成立前でも、自己の相続分に相当する金銭を支払うよう請求できる。


正解:1


1○ CとDは登記なくして自己の持分の所有権を第三者に対抗できます。
2× 相続人Bは、遺産分割協議で、土地全部の所有権を取得することになりました。ただ、登記は法定相続分である3分の1の共有相続登記のままです。遺産分割により土地すべてを自分の物にしたと第三者にも主張できるようにするには、その旨の登記をしておかなければなりません。
3× 遺産分割の対象となります。
4× 相続人は、遺産分割までの間は、相続開始時に存した金銭を相続財産として保管している他の相続人に対して、自己の相続分に相当する金銭の支払を求めることはできません。

 

 

 

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