田中嵩二の宅建士&賃貸管理士試験ブログ

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動機の錯誤

動機の錯誤


民法95条と96条の解釈適用において、いわゆる動機の錯誤をどのように位置づけるべきか。

意思理論の申し子のような存在がこの動機の錯誤と呼ばれる問題である。この点について解決するため時期民法改正で錯誤は無効ではなく取消事由とするようになっている。


1 論点整理


 本論点は民法総則の典型論点のひとつである。しかし、意思主義についての深い理解を必要とするので、初学者にとっては難問のひとつともいえよう。
 このような難問は、ひとつひとつ概念を原則から丁寧に積み重ねていく方法がよい。民法における私的自治の原則から、自由な意思表示を前提とする民法の理念を導き出し、そこから意思表示とは何かを定義する。伝統的かつ原則形態である意思主義を前提に、詐欺と錯誤の決定的な違いを論ずる。つまり、効果意思に対する表示行為の齟齬が錯誤であり、その前提である動機は、原則的な意思主義の考え方には意思表示に含まれていない。錯誤の場合は原理的に無効となり、詐欺や強迫などは、ある意味政策的に(表意者がかわいそうだから)事後的な取消という制度を設けているにすぎないともいえる。ここが出発点である。ここら、結果の妥当性を図るため、修正(例外)を加えていくわけである。すなわち、動機の錯誤であっても要素の錯誤として無効とできる場面があるのではないか。動機の錯誤も無効と認めるのならば、本来的に動機の錯誤(瑕疵)である詐欺取消と同じように考えて、主張権者・主張期間を限定すべきではないか。さらには、詐欺と動機の錯誤が同じ性質のものであるならば、錯誤の場合の無効も取消と同様に扱って、追認ができるようにすべきではないか。錯誤も詐欺と同じく善意の第三者を救済してもいいのではないか、などと論理は発展することになる。
 原則をしっかりおさえていないと、学説や判例の羅列に翻弄することになるので、まずは伝統的な考え方を土台にして理解を深めて下さい。基礎がしっかりしていない建物はどんなに内装にこだわっても、少しの地震でもろくも崩れ去ります。
 法律の勉強はゆっくり急ぎましょう!

 

2 意思主義理論・表示主義理論

 

(1) 意思理論

 

 意思理論(意思ドグマ、意思教説)とは、「法律効果を生ぜしめるべき旨の意思が表示されれば、法秩序は、行為者が欲したがゆえに法律効果を発生せしめる」という考え方をいう。法律行為概念のこのような理解は、私的自治の原則(個人意思自治の原則)に立脚し、「意思」に基づいて法律関係を体系的・統一的に説明しようとする「信念」あるいはイデオロギーである。意思理論は、意思の欠缺・瑕疵ある意思表示の取り扱いのほか、意思能力の観念とも密接に結びついて、わが民法の法体系の基礎をなすとされている。


(2) 意思主義理論

 

 意思理論が確立されていくにつれ、自由や自治の概念は、共同体からの自由という問題から、当事者個人の純粋に内心の心理過程の問題へと焦点が移されていった。

 すなわち、意思表示は、心理学の影響を強く受けた19世紀のドイツ法学により、その心理的経過に則して、①個人が一定の効果を欲する意思(内心的効果意思)を決定し、②この意思を発表しようとする意思(表示意思)を有し、③その意思の発表としての価値ある行為(表示行為)をするという3個の要素からなると分析された。動機は内心的効果意思の縁由にすぎないことから、意思表示の構成要素から外された。そして、この分析枠組に基づいて、意思表示の本体を内心の意思におき、意思と表示との不一致は原則として無効とするという意思主義理論(意思主義)が生まれた。


(3) 表示主義理論

 

 内心的効果意思と表示とが食い違った場合の法律行為の有効性をめぐって意思主義理論と対立するのが表示主義理論(表示主義)である。表示主義理論は、取引安全の保護を前面に押し出し、意思表示の本体を表示におく。この立場は、効果意思は表示行為によって外部から推断される意思であるとし、これと表示があれば、法律行為は原則として有効であるとする。

 

3 無効と取消の効果の違いについて

 

 民法は錯誤を「意思の欠缺」に位置づけている(101条1項)。錯誤による意思表示を意思欠缺の問題として扱うことは、ローマ法の「錯誤者には意思がない」という法格言に胚胎し、ドイツ普通法学において、意思主義理論の基礎の上に確立された。ドイツ普通法学では、意思表示成立の過程について内心の意思に重点をおき、内心的効果意思から出発して、それがそのまま外部に表示されているかどうかだけを問題とした。したがって、内心の効果意思と異なる表示がなされた場合にのみ、意思表示の本質的要件を欠く結果として当然に無効となる。
 これに対し、詐欺・強迫による意思表示(瑕疵ある意思表示)にあっては、意恩と表示との不一致と異なり、内心の意思と表示との間に何らの齟齬も存在せず、ただその効果意思を形成する過程(動機の段階)に、他人の不当な干渉が加わるという欠陥(瑕疵)があったにすぎない。したがって、意思主義理論によれば、無効とはならない。しかし、こうした意思表示を絶対に有効とするときは、表意者に損害を生ずるにいたるので、民法はこれを取り消すことができるものとして、その効力を制限した。
 以上のように、取消と無効という効果の違いは、内心的効果意思を意思表示の出発点とし、意思の欠缺と意思表示の瑕疵を区別する意思主義理論という考え方に基づくと解することができる。
 第三者の詐欺では相手方の悪意が取消しの要件とされている(96条2項)のに対し、錯誤無効の場合には同様の規定がない点についてこの差異も、意思主義理論に基づくと解することができる。
 意思主義理論によると、内心的効果意思が欠けていれば、意思表示の本質的要件を欠く結果として当然に無効である以上、第三者が詐欺等により表意者を錯誤に陥れたことについて相手方が善意でも、法律行為を有効とする余地はない、というのがその理論的帰結と考えられる。錯誤を「意思の欠缺」に位置づけた民法が、錯誤無効の場合に96条2項のような規定を設けなかった理由はこの点に求めることができる。
 これに対し、詐欺のように意思表示に瑕疵があるにとどまる場合には、内心的効果意思と表示とが一致し、意思表示の本質的要件が満たされている。したがって、意思主義理論によれば、法律行為は当然には無効とならず、その効果は取消にとどめられるとともに、取消そのものを制限しても、意思主義理論に抵触しない。この点、第三者の行った詐欺について被詐欺者に無条件に取消を認めるのは相手方に酷である。そこで、96条2項は、被詐欺者の利益と相手方の利益とを調整するために、相手方が詐欺の事実を知って意思表示をした場合に限って取り消すことを認めた。
 詐欺取消は善意の第三者に対抗することができない(96条3項)のに対し、錯誤無効の場合には同様の規定がない点についてこの差異も、意思主義理論に基づくと解することができる。
 意思主義理論によると、内心的効果意思が欠けていれば、意思表示の本質的要件を欠く結果として当然に無効である。したがって、法律行為に要素の錯誤があることを知らず、錯誤による法律行為に基づいて取得された権利について、新たな権利関係に入った者(第三者)に対しても、錯誤無効を対抗することができる、というのがその論理的帰結と考えられる。錯誤を「意思の欠缺」に位置づけた民法が、錯誤無効の場合に96条3項のような規定を設けなかった理由はこの点に求めることができる。
 これに対し、詐欺のように意思表示に瑕疵があるにとどまる場合には、意思表示の本質的要件が満たされている。したがって、意思主義理論によれば、法律行為は当然には無効とならず、その効果は取消にとどめられるとともに、取消の効果を制限しても意思主義理論に抵触しない。この点、その遡及的無効(121条)という効果を第三者にも及ぼすと取引の安全を害することが甚だしい。そこで、96条3項は、権利外観法理に基づき、詐欺の事実を知らないで、詐欺による法律行為に基づいて取得された権利について、新たな権利関係に入った者(第三者)に対しては、詐欺取消の効果を対抗(主張)しえないものとして、遡及効を制限した。

 

4 動機の錯誤

 

(1) 総説

 

 意思主義理論からすれば、95条で無効とされる錯誤とは、内心的効果意思と表示の不一致を表意者自身が知らないことをいうから、内心的効果意思の前段階たる動機の錯誤に95条の適用はないことになる。
 しかし、これに対しては、動機の錯誤と他の錯誤との区別が必ずしも明瞭でないにもかかわらず、動機の錯誤と他の錯誤の法的効果をはっきり区別することは妥当でないなど、多くの疑問が投じられている(野村)。
 そこで、動機の錯誤をどのように取り扱うかが問題となる。


(2) 学説

 

二元的構成説 

 

 二元的構成説は、意思表示錯誤と動機錯誤とを区別する見解である。この見解も、次の2説に分かれる。

 

95条不適用説

 

動機の錯誤は動機が表示されても95条の錯誤には含まれないとする見解である。その根拠としては、民法は錯誤を「意思の欠缺」と捉えていること(101条)。および、「意思の欠缺」とは、内心的効果意思を欠いていることをいい、動機は含まない点を挙げている。 

 

動機表示構成(我妻等、従来の通説)


動機の錯誤については、原則として95条の適用はなく、ただその動機が表示(明示・黙示を含む)されているときにかぎり、例外的に法律行為の内容の錯誤となり95条の適用があるとする見解である。その根拠としては、錯誤とは、内心的効果意思と表示との不一致を表示者が知らないことであるから、動機は意思表示の内容となるものではないことを挙げている。ただ、表示された動機は、意思表示の内容となり、その限りで錯誤の影響を受ける。また、表示を要求することによって、表意者本人の保護と取引の安全とを調和させることができることが挙げられている。

 

一元的構成説(現在の多数説)


 95条の錯誤とは、真意と表示行為の不一致をいい、動機の錯誤についても、他の類型の錯誤と区別することなく、すなわち動機の表示の有無にかかわらず、95条の適用を認めるべきである。ただ、その錯誤無効を主張するには、相手方の悪意または過失を要するとする見解である。その根拠としては、表示主義理論の立場からは、動機と内心的効果意思とは、質的に区別されるべきものではないこと。それゆえ、95条から動機の錯誤のみ排除すべきではないこと。また、判例上錯誤が問題とされた事案のほとんどすべては動機の錯誤の事案であり、これを他の錯誤と区別して取り扱うとすれば95条の実効性は著しく狭められること。さらに、取引の安全との調和は「要素」の解釈および無効を主張するには相手方の悪意または過失を要することによって図ることができること。動機の錯誤に属する「性状の錯誤」と表示行為の錯誤に属する「同一性の錯誤」との差は紙一重であることなどが挙げられている。


(3) 判例


 「意思表示をなすについての動機は表意者が当該意思表示の内容としてこれを相手方に表示した場合でない限り法律行為の要素とはならないものと解するを相当とする。」(最判昭29.11.26)。

 

5 詐欺と錯誤の二重効

 

(1) 総説

 

 詐欺取消の要件が満たされるときは、相手方は、動機の錯誤に陥っている。動機の錯誤についても95条の適用が可能であるという立場にたてば、詐欺によって生じた錯誤が要素の錯誤にあたる場合、詐欺取消と錯誤無効の両方の要件を同時に満たし得ることになる。
 意思主義理論によると、錯誤のように内心的効果意思が欠けていれば、法律行為は当然に効力を有しないことになるのに対し、詐欺のように意思表示に瑕疵があるにとどまる場合には、法律行為を一応有効としてよい。この考え方をとった場合、法律行為の要素に錯誤がある意思表示は当然に無効であり、これを一応有効としつつ取消を認める余地はないはずである。
 したがって、設問前段の考え方によれば詐欺と錯誤の二重効は否定されることになる。これは妥当であろうか。


(2) 学説


二重効否定説(旧通説)


 表意者は無効と取消の主張を選択的になしえず、無効の主張のみなしうるとする見解である。その根拠としては、取り消しうる行為は一応有効に成立していることを前提にしているから、無効な行為を取り消す余地がないことが挙げられている。
二重効肯定説(現在の通説)
 表意者は無効の主張と取消の主張とを選択的になしうるとする見解である。その根拠は、第一に、取消も無効と同じように表意者保護のため法律行為の効果を否定する手段にすぎず、無効な法律行為は無であり取消す余地がないとするのは、法律概念を自然的実在と同視するものであること。第二に、法の形式論理構造の観点に立つ限り、法律効果は理論的結論として具体的法律要件とによって個別化され、内容・目的が同一であっても、法律要件を異にする限り、おのおの独立の効果として二重効を承認せざるをえないこと。第三に、実際問題として無効の挙証と取消の挙証とが共に容易にできるわけではなく、例えば錯誤無効においては内容の重要な部分であることを証明するのが困難であり、詐欺においては相手方の故意を証明するのが困難である。したがって、表意者保護のためどちらでもやりやすい方法を取って差しつかえないと解すべきであることなどが挙げられている。

 

(3) 判例


 判例には、抽象論ながら、錯誤が要素に関するか否かによって無効(95条)か取消(96条)かが決まるとするものがある(大判大5.7.5)。

 

6 錯誤の主張権者


(1) 総説


 設問前段のように、錯誤は詐欺よりも意思表示としての瑕疵が大きく、したがって両者の効果は区別されるべきとする立場からは、錯誤による「無効」と詐欺による「取消」は区別されることになり、錯誤による意思表示は、詐欺による取消のように特定人の行為を必要とする(120条)ことなく、最初から当然に無効であり、だれからも主張し得ることになる。
 しかし、このように無効に関する原則を貫徹すると、表意者が無効主張を望まない場合にも、無効とされてしまい、表意者保護のための意思主義がかえって表意者を害するとの批判がある。
 そこで、錯誤の主張権者を制限すべきではないかが問題となる。


(2) 学説


絶対的無効説


 錯誤無効は絶対的無効であり相手方あるいは第三者が錯誤無効の主張をすることも許される。すなわち、第三者にも固有の錯誤無効の主張(適格)が認められるとする見解である。その根拠としては、第一に、95条の規定する錯誤は表示行為に対して表意者の内心的効果意思が欠ける場合であり意思の欠缺の場合であるから絶対的無効であること。第二に、無効は誰でも何時でもどこでも主張し得るはずであることが挙げられている。
 ただこの見解は、第三者にまで錯誤無効の主張を認めると取引の安全を害するおそれがある、との批判が加えられている。


相対的無効説(通説)


 錯誤無効は相対的無効であり、表意者以外の者の錯誤無効の主張は許されない。この立場では、第三者固有の錯誤無効の主張(適格)は認められず、第三者は債権者代位権の要件を充たす場合にのみ代位行使によって表意者の無効主張をなすことになるとする見解である。その根拠は、第一に、錯誤制度は表意者本人の保護を目的とするものであるから表意者が無効にすることを欲していない場合には、表意者以外の者に錯誤を主張させるべき根拠がないこと。第二に、民法が公序良俗違反のような反社会的な法律行為を無効とする反面、心裡留保や錯誤のように反社会的でない行為についても無効としていることに鑑みると、無効概念は絶対的無効に尽きる趣旨ではなく無効概念の二義性を承認すべきであることが挙げられている。

 

(3) 判例最判昭45.3.2)


 「意思表示の要素の錯誤については、表意者自身において、その意思表示に瑕疵を認めず、錯誤を理由として意思表示の無効を主張する意思がないときは、原則として第三者が右意思表示の無効を主張することは許されないものであるが、当該第三者において表意者に対する債権を保全するため必要がある場合において、表意者が意思表示の瑕疵を認めているときは、表意者みずからは当該意思表示の無効を主張する意思がなくても、第三者たる債権者は表意者の意思表示の錯誤による無効を主張することが許されるものと解するのが相当である。」
 この判例は、①第三者が表意者に対する債権を保全するために、錯誤を主張する必要があること、②表意者が意思表示の瑕疵を認めていること、の2つの要件を充たす場合に、例外的に、第三者の錯誤無効の主張を認めたものである。
 しかし、判例が相対的無効説を採るものなのかについては、疑問がある。というのは、相対的無効説を採るならば、第三者に固有の錯誤無効主張の適格は認められないから、債権者代位権の行使によるほかなく、その場合、①の要件さえ満たせば足りるはずだからである。この点で、判例がわざわざ②の要件までも付加したのは、第三者には原則として錯誤無効主張の適格はないが、①②の要件を満たす場合には、例外として第三者に固有の錯誤無効主張適格を認める趣旨なのではないかとの分析がなされている。その意味で、判例の立場は絶対的無効説と相対的無効説の折衷的な立場といえよう。

 

7 遡及的追認


 錯誤無効にあっても詐欺取消と同様に遡及的追認を認めるべきか。
 この点、設問前段のように、錯誤は詐欺よりも意思表示としての瑕疵が大きく、したがって両者は区別されるべきとする立場からは、錯誤による「無効」と詐欺による「取消」は区別されることになり、錯誤による意思表示は、詐欺による取消のように(122条)、遡及的追認は認められないことになる。
 しかし、錯誤無効は、表意者本人を保護する制度である以上、表意者が契約を有効としたいのであれば、取消の追認(122条)と同様に、遡及的追認を認めるべきとも考え得る(近江)。
 そこで、学説の中には、①119条の不当性を指摘して追認は一般的に遡及効を有するとする立場(川島)と、②無権代理に関する116条を類推適用する立場(川井)、③取消に関する122条を類推すべきとする立場(近江)などがある。


8 第三者保護


 錯誤無効においても第三者を保護すべきか
 この点、設問前段のように、錯誤は詐欺よりも意思表示としての瑕疵が大きく、したがって両者は区別されるべきとする立場からは、錯誤による「無効」と詐欺による「取消」は区別されることになり、錯誤による意思表示は、詐欺による取消のように(96条3項)、第三者の保護は認められないことになる。そして、現在でもこの立場は有力である(四宮、能見)。
 しかし、①自分で勝手に勘違いした錯誤の場合よりも、他人に騙された詐欺の方が本人保護の要請が強いはずであるが、96条3項により、逆に被詐欺者の保護が薄くなっており、かかる不均衡を解消すべきである(内田)とか、②「重大なる過失」ある表意者の無効主張は認めない95条但書は、無効が対抗できない場合があることを承認していることになるので、96条3項を類推適用する根拠がある(近江)などとして、96条3項の類推適用を認める立場も有力である。
 なお、③錯誤無効は第三者にも対抗することができるのが原則であるが、外観(登記)を除去し得るのに除去しなかったような場合には、外観作出に帰責性があるものとして、94条2項の類推適用を認めるべきであるとする立場(四宮、能見)も有力である。


9 主張期間


 錯誤無効の主張期間を詐欺取消と同様に制限すべきか
 この点、設問前段のように、錯誤は詐欺よりも意思表示としての瑕疵が大きく、したがって両者は区別されるべきとする立場からは、錯誤による「無効」と詐欺による「取消」は区別されることになり、錯誤による意思表示は、詐欺による取消のように(126条)、主張期問の制限は認められないことになる。そして、現在でもこの立場は有力である(内田など)。
 しかし、前述した近時の有力説のように、①動機の錯誤にも錯誤無効の主張を認め、②錯誤無効の主張権者を制限し、③錯誤においても遡及的追認を認め、④錯誤無効においても第三者を保護するといったように、錯誤無効と詐欺取消を近付ける考え方では、126条の期間制限を類推適用することも考えられる(近江)。

 

 以上。

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