田中嵩二の宅建士&賃貸管理士試験ブログ

宅建士試験&賃貸不動産経営管理士試験の受験に役立つ情報を提供します。

宅地建物取引業の免許と宅地建物取引士の関係

宅建試験に合格したら不動産会社ができるの?

宅建試験に合格していなくても不動産会社はできます。

宅地建物取引業(以下、宅建業という)を営むためには免許を受けなければならないことは前回の記事で説明しました。宅建試験の学習をはじめたばかりのときは、この免許と自分がこれから取得しようとする宅地建物取引士(以下、取引士という)とを混同してしまうことがよくあります。免許と取引士の資格はまったく異なるものです。したがって、取引士でなくても、宅建業の免許を受け、営むことができます。ではこの2つはどのような関係にあるのでしょうか。


免許を受けるには事務所ごとに専任の取引士が必要?

宅建業の免許を受けるには、事務所ごとに従業員の数に対する割合が5分の1以上となる数の成年者である専任の取引士を置かなければなりません。ちなみに、宅建業者または会社の場合はその役員等つまり経営者が取引士の資格を取得していた場合で、自ら主として業務に従事する事務所では成年者である専任の取引士とみなされます。したがって、取引士の資格を有していないかたが宅建業を営む場合は、資格をもっている人を雇えばよいわけです。


事務所以外の場所にも専任の取引士が必要?

宅建業は事務所以外の場所を拠点として展開する場合もあります。たとえば、宅地建物の取引や媒介契約の申込みを行う不動産フェア、宅地建物の買い換え・住み替えの相談会などの催しを期間限定で設置する催事場や、特定のプロジェクトを行うために設置した現地出張所などです。このような事務所以外の場所にも専任の取引士を置かなければならない場合があります。それは、その場所で、①宅地や建物の「売買」「交換」の契約(予約を含む)、②宅地や建物の「売買」「交換」「貸借」の代理や媒介の契約、③または①や②の契約の申込みを受ける場合には、成年者である専任の取引士を置かなければなりません。ただ、事務所のように5人に1人以上の割合ではなく、少なくとも1人でよいことになっています。


要件を欠いたら監督処分?

宅建業者は、前記に違反する事務所等を開設してはなりません。もし専任の取引士が退職し要件を満たさない状態になったときは、2週間以内に必要な措置をとらなければなりません。また、とった場合は免許権者にその旨を30日以内に届け出なければなりません。もし、その措置がとれない場合は業務停止処分になる可能性があります。

 

今日のポイント

  • 宅建業の免許と、宅建試験を受けて取得する取引主任者とは別物であること。
  • 宅建業の免許を受けるために取引主任者が必要となるという関係であること。
  • 事務所には5人に1人以上、事務所以外の場所で契約行為等を行う場合は少なくとも1人の専任の取引主任者を設置しなければならないこと。

 

(過去問にチャレンジ!)

【問 題】 取引主任者の設置に関する次の記述のうち、宅地建物取引業法(以下この問において「法」という。)の規定によれば、正しいものはどれか。(平成19年度問30)

  1. 宅地建物取引業者Aは、 1棟100戸のマンションを分譲するために案内所を設置し、当該案内所においては売買契約の申込みの受付のみを行うこととした。この場合、Aは、当該案内所に成年者である専任の取引士を置く必要はない。
  2. 宅地建物取引業者B(甲県知事免許)は、その事務所において、成年者である取引主任者Cを新たに専任の取引士として置いた。この場合、Bは、30日以内に、その旨を甲県知事に届け出なければならない。
  3. 宅地建物取引業者Dは、その事務所の専任の取引主任者Eが3か月間入院したため、宅建業法第15条に規定する専任の取引士の設置要件を欠くこととなったが、その間、同条の規定に適合させるために必要な措置をとらなかった。この場合、Dは指示処分の対象になるが、業務停止処分の対象にはならない。
  4. 宅地建物取引業者である法人Fの取締役Gは取引士であり、本店において専ら宅地建物取引業に関する業務に従事している。この場合、Fは、Gを本店の専任の取引士の数のうちに算入することはできない。

 

解答:2

  1. × 宅建業者が、契約行為等を行うことを予定する、10戸以上の一団の建物の分譲について案内所を設置して行う場合には、成年者である専任の取引士を、少なくとも1人以上置かなければなりません。
  2. ○ 宅建業者は、事務所ごとに置く成年者である専任の取引士の氏名が変更になったときは、30日以内に、その旨を免許権者に届け出なければなりません。したがって、Cを新規に専任の取引主任者として置いた旨を甲県知事に届け出なければなりません。
  3. × 宅建業者は、既存の事務所に置かれている成年者である専任の取引士の数が国土交通省令に規定する数(従事者5人に1人以上の割合)を下回ったときは、2週間以内に、省令に規定する数にするため必要な措置を執らなければなりません。2週間以内に必要な措置を執らなかった場合は、業務停止処分の対象になります。したがって、Dは指示処分の対象にも業務停止処分の対象にもなります。
  4. × 宅建業者である法人の役員が取引主任者であるときは、その者が主として宅建業の業務に従事する事務所等(専任の取引主任者の設置義務がある場所。出張所、案内所等も含む)では、その者は、その事務所等に置かれる成年者である専任の取引士とみなされます。したがって、Gは取締役であっても本店の専任の取引士になることができます。


 

この記事は2014年4月21日の「全国賃貸住宅新聞」に掲載したものです。

※ 法改正により、取引主任者を取引士に名称変更しております。

 

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