田中嵩二の宅建士&賃貸管理士試験ブログ

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準都市計画区域に建築する場合にも準防火地域の規制に従うの?

Q.準都市計画区域に建築する場合にも準防火地域の規制に従うの?

 

A.準都市計画区域にはそもそも準防火地域を指定できません。

 

平成28年度宅建試験に出題された問題をピックアップして解説して行きます。

 


なぜ都市計画法を定めたの?

都市は総合的な生活空間です。都市においては、健康で文化的な都市生活や機能的な都市活動が確保されるよう計画的な施設整備及び市街地開発が必要とさる一方、良好な環境を保ち、乱開発等がなされないよう適正な制限のもとに土地の合理的な利用を図ることが求められます。そこで、総合的で具体的なまちづくりの計画(都市計画)の決定方法とその内容を定め、それを実現するための強制力を定めた法律が必要となります。この要請に従って定められたのが都市計画法です。

 

日本全国で都市開発するの?

日本の国土すべてを一斉に都市化することは、物理的にも財政的にも不可能です。またその必要もないでしょう。そこで、まず都市化する場所を決めます。その場所が、都市計画区域準都市計画区域です。都市計画区域とは、一体の都市として総合的に整備し、開発し、および保全する必要があるとして指定された区域をいいます。つまり、街づくりをする場所のことです。すべての都市計画区域について、マスタープラン(都市計画区域の整備、開発および保全の方針)を定めなければなりません。都市計画区域は、行政区画とは関係なく定められますが、一つの都道府県内に指定する場合は都道府県が指定し、複数の都府県にわたる場合は国土交通大臣が指定します。

 

都市計画区域以外には規制がないの?

都市計画区域の指定をしないところであっても、幹線道路の沿道や高速道路のインターチェンジ周辺などでは、大規模な開発や建築が行われ、景観の悪化や交通渋滞を引き起こしたり、さまざまな用途の建築物が無秩序に立ち並んだりするといった問題が発生しています。そこで、都市計画区域の指定をしない場所のうち、多くの建築物の建築などが現に行われていたり、または将来行われると見込まれるところで、そのまま放置すれば、将来の街づくりの障害となるおそれがある区域は、準都市計画区域として指定することができることになっています。この準都市計画区域は、都市計画区域に準ずるものとして都道府県が指定します。

 

準都市計画区域ではなんでも規制できるの?

都市計画の中でも重要な地域地区の一部を指定できます。都内などに多い第一種低層住居専用地域も定めることができます。商業地域や工業専用地域等すべての用途地域を指定できます。それ以外にも、用途地域を補完するため、用途地域内の一定の地区における当該地区の特性にふさわしい特別の目的から土地利用の増進、環境の保護等を図るために定める特別工業地域も指定できます。住環境にそぐわない建物としては、例えばパチンコ店の建築を禁止するというような建築規制を実施することができる特定用途制限地域も定めることができます。ただ、都内には多い防火地域・準防火地域という火災から地域全体を守る建築規制については準都市計画区域には指定できません。このように、それぞれの規制について、準都市計画区域内で指定できるかできないのかが都市計画法8条に規定されています。

 

高度利用地区と高度地区は違うの?

まったく違います。高度利用地区は、用途地域内の市街地における土地の合理的かつ健全な高度利用と都市機能の更新とを図るため、容積率の最高限度および最低限度、建ぺい率の最高限度、建築面積の最低限度ならびに壁面の位置の制限が定められる地区です。それに対して、高度地区は用途地域において市街地の環境を維持し、または土地利用の増進を図るため、建築物の高さの最高限度または最低限度が定められる地区です。

 

地区計画って何?

地区計画とは、地区の課題や特徴を踏まえ、住民と区市町村とが連携しながら、地区の目指すべき将来像を設定し、その実現に向けて都市計画に位置づけて「まちづくり」を進めていく手法です。昭和55年に、良好な環境の街区の形成を図ることを目的として都市計画法に導入されました。都市計画区域内の、用途地域が定められている土地、または、用途地域が定められていない区域の一定の土地に定めるものとされています。現在、東京都内各所に定めらています。

 

地区整備計画って何?

地区整備計画とは、地区計画を実現するための具体的なプランのことをいいます。これにより、道路・公園・建築物などを整備して行きます。地区計画には原則として地区整備計画を定めますが、特別の事情があれば定めなくてもよいことになっています。ただ、地区計画だけで整備計画がなければ、ただの絵そらごとにすぎないので、土地所有者の全員の同意で、市町村に対し、地区整備計画を定めるよう要請できます。

地区整備計画には、原則として、地区計画の目的を達成するため、建築物等の用途の制限、建築物の容積率・建ぺい率・建築物の敷地面積・壁面の位置などを定めます。ただし、市街化調整区域内では、建築物の容積率・建築面積・高さの制限は除かれます。

また、一定の再開発等促進区もしくは開発整備促進区、地区整備計画が定められた地区計画の区域では、勝手に土地に手を加えたり、建物を建てたりすることはできません。原則として届出が必要です。届出は、行為着手の30日前までに、市町村長に行います。ちなみに、届け出た内容を変更する場合も同様に届出が必要となります。この届出が地区計画に適合しない場合、市町村長は計画変更の勧告をすることができます。

 

再開発等促進区・開発整備促進区とは?

再開発等促進区とは、土地の合理的かつ健全な高度利用と都市機能の増進とを図るため、一体的かつ総合的な市街地の再開発または開発整備を実施すべき区域をいいます。それに対して、開発整備促進区とは、劇場、店舗、飲食店その他これらに類する用途に供する大規模な建築物(特定大規模建築物)の整備による商業その他の業務の利便の増進を図るため、一体的かつ総合的な市街地の開発整備を実施すべき区域をいいます。

こらの区域を指定するための要件として、現に土地の利用状況が著しく変化しつつあり、または著しく変化することが確実であると見込まれる土地の区域であることと、都市の機能の増進に貢献することが定められています。

ただし、再開発等促進区は用途地域内に定めるものとされているのに対して、開発整備促進区は、第二種住居地域、準住居地域
工業地域、用途地域が定められていない土地の区域(市街化調整区域を除く)に定めるものとされています。

 

公共施設を含む大きな街づくりをするには?

都市計画法には都市計画事業という大規模な都市開発を行う手続があります。

都市計画事業とは、都市計画施設の整備に関する事業(道路などの都市施設をつくる工事)と市街地開発事業(道路などの都市施設だけじゃなく宅地の開発なども一緒に行う総合的な工事)をいいます。言い換えれば、街づくりのための公共工事のことです。

都市計画事業を理解するポイントは、工事の計画を立てて(都市計画の決定)、実際に工事を進めて行き、完成させるまで長い時間がかかるという点をイメージすることです。計画を立てたはいいが、その後に道路を敷く予定だったところにビルが乱立し、分譲マンションを予定した宅地予定地にパチンコ屋が立ち並ぶ・・・なんてことになったらいつまでたっても都市計画は実現できません。そこで、早いうちから制限をかけて工事の邪魔になるようなことを法律で規制しています。

 

誰が都市計画事業を行うの?

原則として、市町村が都道府県知事の認可を受けて行います。例外として、市町村が施行することが困難または不適当な場合その他特別な事情がある場合には、都道府県が国土交通大臣の認可を受けて行ったり、さらに国の利害に重大な関係を有する場合には、国の機関が国土交通大臣の承認を得て行ったりすることがあります。国の機関、都道府県及び市町村以外の者は、事業の施行に関して行政機関の免許、許可、認可等の処分を必要とする場合においてこれらの処分を受けているとき、その他特別な事情がある場合においては、都道府県知事の認可を受けて、都市計画事業を施行することができます(都道府県知事は、認可をしようとするときは、あらかじめ、関係地方公共団体の長の意見をきかなければならない。)。

 

大規模な市街地開発事業内の区域の買い占めや無秩序な開発を防ぐ方法は?

市街地開発事業等予定区域という手法が効果的です。市街地開発事業等予定区域とは、3年以内に市街地開発事業に関する都市計画または都市施設に関する都市計画が決定される区域をいいます。つまり、本格的な都市計画がされるまでの暫定的な区域です。

なぜこのような制度があるのかといえば、通常、事業や施設に関する都市計画を決定するまでには詳細な計画策定が必要なのである程度長く時間がかかるものです。しかし、その策定期間内に買い占めや、無秩序な開発などが行われ、計画実現が困難となる場合が想定できます。すなわち、先に予定区域を定めることによってこのような問題を回避することが予定区域の目的です。なお、予定区域は都道府県が定めます。

ちなみに、3年以内に都市計画が決定されると、その後2年以内に都市計画事業の認可の申請がされて、市街地開発事業や施設の整備事業が実際に施行されることになります。仮に、3年以内に都市計画が定められないときは、予定区域は効力を失います。

 

市街地開発事業等予定区域にはどのようなものがあるの?

予定区域には次のようなものがあります。

  • 新住宅市街地開発事業の予定区域
  • 工業団地造成事業の予定区域
  • 新都市基盤整備事業の予定区域
  • 区域の面積が20ヘクタール以上の一団地の住宅施設の予定区域
  • 一団地の官公庁施設の予定区域
  • 流通業務団地の予定区域

また、街地開発事業等予定区域に係る市街地開発事業又は都市施設に関する都市計画には、施行予定者をも定めなければなりません。この都市計画に定める施行区域又は区域及び施行予定者は、当該市街地開発事業等予定区域に関する都市計画に定められた区域及び施行予定者でなければなりません。

 

 

(2016年度の問題にチャレンジ!)

【問 16】 都市計画法に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

  1.  市街地開発事業等予定区域に係る市街地開発事業又は都市施設に関する都市計画には、施行予定者をも定めなければならない。
  2.  準都市計画区域については、都市計画に準防火地域を定めることができる。
  3.  高度利用地区は、用途地域内において市街地の環境を維持し、又は土地利用の増進を図るため、建築物の高さの最高限度又は最低限度を定める地区である。
  4.  地区計画については、都市計画に、地区計画の種類、名称、位置、区域及び面積並びに建築物の建ぺい率及び容積率の最高限度を定めなければならない。
正解:1
  1. 〇 市街地開発事業等予定区域に関する都市計画には、必ず施行予定者を定めなければなりません(都市計画法12条の2第2項)。
  2. × 準都市計画区域については、地域地区のうち用途地域の他必要なものを定めますが、防火地域や準防火地域を指定することはできません。
  3. × 高度利用地区は建築物の高さの限度を定めるものではありません。問題文は高度地区の規制です(同法9条17項、18項)。
  4. × 地区計画については、都市計画に、名称、位置及び区域とその面積を定めるほか、地区計画の目標、整備、開発及び保全の方針、地区施設及び地区整備計画を定めます。それに対して、建ぺい率など建築制限は地区整備計画に定めますが、必ず定めるものではありません。

 

  

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