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田中謙次の宅建試験ブログ

宅建試験の受験に役立つ情報を提供します。

宅建試験にも出題される信義則・権利濫用って何?

宅建試験にも出題される信義則・権利濫用って何?

シリーズ・基礎からしっかり権利関係1回目

(全国賃貸住宅新聞 2015年1月12日号)

 

2014年の宅建試験対策シリーズの記事に続き、2015年も宅建試験対策シリーズが毎週掲載されます。

 

3月までは、基礎からしっかり権利関係(主に民法)を理解するための記事となります。もちろん、2014年の連載記事と同様に、関連する過去問と解説、重要ポイントまとめ、形式はできるかぎりQ&A方式で、深く解りやすく、すべて書き下ろしで毎週私が執筆します。

 

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信義則と権利濫用

 

1回目の記事では、民法1条に記されている基本原則について触れました。

資格試験の勉強はついつい末端の知識の暗記に偏りがちですが、強烈に暗記が得意な場合は別にして、根本の基礎理論がある程度頭に入っているのといないのとでは、暗記する量も、質も、活用能力も大幅に異なってきます。

 

法律の勉強は、急ぎながらも、ときに道草を食うのも大事だったりするわけです。

 

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民法1条(基本原則)

1項 私権は、公共の福祉に適合しなければならない。


2項 権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。


3項 権利の濫用は、これを許さない。

 

この1条は、明治29年に民法が制定されたときには記されていなかったものです。これは、第二次大戦後の昭和22年の民法改正によって付け足されたものです。

 

ただ、これら、公共の福祉、信義則、権利濫用の禁止については、それ以前においても判例理論として確立していました。

 

あまりに抽象的なので、こんなのは宅建試験にも実務にもぜんぜん重要じゃないから気にするな!合否には影響しない!という威勢の良い講師もいたりします。

 

もちろん、条文の文言だけを見ていたら、これほど抽象的で使い勝手の悪いものはないでしょう。

 

公共って何?

 

信義って何?

 

濫用って何?

 

と一歩踏み込んでみると条文をみるだけでは皆目検討がつかないことに気づきます。

 

これらの条文は一般規定と法律用語ではいうのですが、これらは条文にない要件や効果を裁判所が解釈により導きやすいようにできるという利点が重要です。

 

我が国のように自由主義立憲主義を採用する国では、権力分立が国の統治の基本になっています。小学校で習ったと思いますが、国家権力の濫用を抑止するため、権力作用を複数に分けて、それぞれがチェックしあい、バランスをとるという方策です。我が国では3つの作用に分けています。立法を担う国会、行政を担う内閣、司法を担う裁判所です。

法律を作るのは国会、その法律を解釈・適用するのが裁判所というように役割分担がなされているわけです。

つまり、裁判所は、良かれと思っても、現行の法律を超えて勝手に法律を作り出して結論を出すことはできません。もし、勝手に理屈を作って裁判したとなれば、上訴審で破棄を免れません。

 

しかし、国会には限界があります。臨機応変に民法の改正ができるわけでもなく、仮にしたような場合は何十万条、何百万条もの具体的な条文が必要となり、とても使い勝手が悪くなります。

そこで、時代が変わり、現行の民法では想定もしていなかった事件が起こったときでも、法律改正をせずとも、事件を解決する方法が必要になるのです。これが一般規定が存在する意義です。

 

長々とお話ししましたが、民法1条のような一般規定は、その規定に意味があるのではなく、その条文を根拠としながら、その他の条文にはないような要件や効果をまるで法律を作るがごときに裁判所が理論を打ち立てることに意味があるわけです。

 

解釈改憲という言葉と同じ意味ですね。もちろん、民法憲法ではないので、解釈改法とでもいうといいのかな(法律用語ではありません。私が勝手に作った言葉です)。

 

ここまで書くと、ピンっとくる方が多いと思います。

 

そうなんです!この一般規定の出題のされ方ですが、ここ数年間毎年出題されている民法の条文に明記されているか否かを求める問題がまさにそうなんです。

 

さらに言えば、条文に書かれていないけれど、一般規定等を通じて判例理論となっているということは、近々予定されている民法財産法の大改正についての出題といっても過言ではないのです。

何を言っているのかというと、これまで条文には明記されていなかったことが長年の判例理論で世の中に定着したと思えるもの、たとえば敷金についてのルール、そういったものの多くが新しい民法典にはふんだんに明記されることになっているのです。

 

どうでしょうか?

 

毎回問1~3あたりに出題される条文明記問題。これを条文にある・ないで表分けされただけの予備校の図表を眺めて暗記するだけでなく、上記の事を知った上で暗記するのとでは、知識量と知識の定着度、知識の将来的な活用可能性に大きな違いがあると思いませんか?

 

宅建試験に出題が予想される判例

 

土地の賃貸人および転貸人が、転借人所有の地上建物の根抵当権者に対し、借地権の消滅をきたすおそれのある事実が生じたときは通知する旨の条項を含む念書を差し入れた場合には、賃貸人および転貸人が地代不払いの事実を土地の転貸借契約の解除に先立ち根抵当権者に通知する義務を負うので、その不履行を理由とする根抵当権者の損害賠償請求は信義則に反するとはいえない。(最判平22・9・9判時二〇九六━六六)

 

土地の売買契約により、買主が所有権を取得し、その引渡しを受けた後に、売主がその土地に第三者のため根抵当権および地上権の設定登記をした事情がある場合に、売主が買主に対し残代金の支払いを催告し、その不払いを理由に土地の売買契約を解除しても、右催告は信義則に反し無効である。(最判昭43・5・30判時五二三━三四)

 

延滞賃料が少額であり、借家人にも修繕費償還請求権があるなどの事実の下では、借家人に賃貸借の基調である相互の信頼関係を破壊する程度の不誠意は認められず、賃料不払いを理由とする解除権の行使は信義則に反し許されない。(最判昭39・7・28民集一八━六━一二二〇)

 

賃借地上の所有建物が火災によって滅失した後、賃貸人の建築禁止通告および土地明渡調停の申立てによって建物の築造が妨げられたために、賃借人が建物を再築することができないまま賃貸借期間が満了したという場合、賃貸人が地上の建物の不存在を理由として賃借人に借地法四条一項に基づく借地権の更新を請求する権利はないと主張することは、信義則上許されない。(最判昭52・3・15判時八五二━六〇)

 

ビルの賃貸、管理を業とする会社を賃借人とする事業用ビルの賃貸借契約が賃借人の更新拒絶により終了した場合において、賃貸人が、賃借人にその知識、経験等を活用してビルを第三者に転貸し収益を上げさせることによって、自ら各室を個別に賃貸することに伴う煩わしさを免れるとともに、賃借人から安定的に賃料収入を得ることを目的として賃貸借契約を締結し、賃借人が第三者に転貸することを賃貸借契約締結の当初から承諾していたものであること、再転借人が現にその貸室を占有していることなどの事実関係があるときは、賃貸人は、信義則上、賃貸借契約の終了をもって再転借人に対抗することができない。(最判平14・3・28民集五六━三━六六二)

 

不動産の共同相続人の一人が、単独相続の登記をして、これに抵当権を設定し、登記を経由しながら、自己の持分を超える部分の抵当権の無効を主張して、その抹消登記を請求することは、信義則に照らし許されない。(最判昭42・4・7民集二一━三━五五一)

 

土地の売買予約の成立後当事者双方が予想せずその責めに帰すことのできない事情により価額が高騰した後に予約完結権が行使されても、特段の事情のない限り信義則に反しない。(最判昭56・6・16判時一〇一〇━四三)

 

物上根保証人が債権者に対して担保保存義務(五〇四条)免除の特約をしている場合、債権者が債務者に対する追加融資の担保として取得した根抵当権をその追加融資の弁済に伴って放棄したなどの事情があるときは、債権者が右特約による免責の効力を主張することは信義則に違反しない。(最判平7・6・23民集四九━六━一七三七)

 

売主から委託を受けてマンションの専有部分の販売に関する一切の事務を行っていた宅地建物取引業者には、専有部分内に設置された防火戸の操作方法等につき買主に対して説明すべき信義則上の義務があるとされた事例。(最判平17・9・16判時一九一二━八)

 

建築会社の担当者が、顧客に対し融資を受けて顧客所有地に容積率の制限の上限に近い建物を建築した後にその敷地の一部売却により返済資金を調達する計画を提案した際に、同計画には建築基準法にかかわる問題があることを説明しなかったときは、その点に説明義務違反があるとされた事例。(最判平18・6・12判時一九四一━九四)

 

契約の一方当事者が、当該契約の締結に先立ち、信義則上の説明義務に違反して、当該契約を締結するか否かに関する判断に影響を及ぼすべき情報を相手方に提供しなかった場合には、当該一方当事者は、相手方が当該契約を締結したことにより被った損害につき、不法行為による賠償責任を負うことがあるのは格別、当該契約上の債務の不履行による賠償責任を負うことはない。(最判平23・4・22民集六五━三━一四〇五)

 

宇奈月温泉事件 所有権が侵害されてもこれによる損失がいうに足りないほど軽微であり、しかもこれを除去することが著しく困難で莫大な費用を要するような場合に、不当な利益を獲得する目的で、その除去を求めるのは権利の濫用にほかならない。(大判昭10・10・5民集一四━一九六五)

 

新規温泉の掘さくにより、既存温泉井の水位、湧出量、温度につき多少変化があっても新規掘さくが主たる原因と断定できず、また、ポンプの座位置の変更、モーターの取替えにより容易に既存温泉井の利用、経営をなしうるときは、新規掘さくは権利濫用とならない。(最判昭33・7・1民集一二━一一━一六四〇)

 

隣地に対する日照、通風の妨害を生ずる二階増築工事が権利の濫用として不法行為になるとされた事例。(最判昭47・6・27民集二六━五━一〇六七)

 

仮換地上に建物は一応移築されたが、まだ賃借権の目的となるべき土地の指定を受けていない賃借人が賃料の弁済供託を続け、また困窮しているなどの事情があるときは、これに対する賃貸人の明渡請求は権利の濫用に当たる。(最判昭56・12・4民集三五━九━一二八九)

 

土地所有者が他人の地上建物を違法に取り壊したという事実があっても、同人の右建物所有者に対する土地の不法占有を理由とする損害賠償請求権の行使は可能であって、権利濫用に当たらない。(最判昭57・10・19判時一〇八六━九二)

 

建物が建築基準法に違反し除却命令の対象であることが明らかである場合に、右建物の所有者が隣接地の所有者に対して下水管の敷設工事についての受忍を求めることは、権利の濫用に当たる。(最判平5・9・24民集四七━七━五〇三五)

 

借地人が二筆の借地を一体として利用し(ガソリンスタンド)、一方のA地上にのみ登記された建物を有する場合、両土地を譲り受けた者が他方のB地の明渡しを請求するのは権利の濫用に当たる。(最判平9・7・1民集五一━六━二二五一)

 

建物の地下一階部分を賃借して店舗を営む者が建物の所有者の承諾の下に一階部分の外壁等に看板等を設置していた場合において、建物の譲受人が賃借人に対して当該看板等の撤去を求めることが、貸主と借主の利益を比較衡量して、権利の濫用に当たるとされた事例。(最判平25・4・9判時二一八九━二六)

 

いわゆる事情変更により契約当事者に契約解除権を認めるためには、事情変更が信義衡平上当事者を拘束することが著しく不当と認められること、また、その事情の変更は客観的に観察せられることを要する。(最判昭29・2・12民集八━二━四四八)

 

ゴルフクラブ会員に対して、その入会契約後にゴルフ場ののり面が崩壊し、多額の費用が必要だったからといって、事情変更の原則を主張して、費用の分担を要求し、これを拒んだ会員の権利を否定することはできない。(最判平9・7・1民集五一━六━二四五二)

 

 

新聞記事では、過去問も例に挙げながら、とくに信義則と権利濫用の深い意味を説明しております。ぜひ、購読してみて下さい!

 

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