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追認の要件と効果(民法122条・124条)の改正

追認の要件と効果(民法122条・124条)の改正

平成27年3月31日 民法の一部を改正する法律案が後の宅建士試験に与える影響について定期的に解説します。

 

新旧対照条文

現行

(取り消すことができる行為の追認)
第122条 取り消すことができる行為は、第百二十条に規定する者が追認したときは、以後、取り消すことができない。ただし、追認によって第三者の権利を害することはできない。

 

(追認の要件)
第124条 追認は、取消しの原因となっていた状況が消滅した後にしなければ、その効力を生じない。
2 成年被後見人は、行為能力者となった後にその行為を了知したときは、その了知をした後でなければ、追認をすることができない。
3 前二項の規定は、法定代理人又は制限行為能力者の保佐人若しくは補助人が追認をする場合には、適用しない。

 

改正案

(取り消すことができる行為の追認)
第122条 取り消すことができる行為は、第百二十条に規定する者が追認したときは、以後、取り消すことができない。

 

(追認の要件)
第124条 取り消すことができる行為の追認は、取消しの原因となっていた状況が消滅し、かつ、取消権を有することを知った後にしなければ、その効力を生じない。
2 次に掲げる場合には、前項の追認は、取消しの原因となっていた状況が消滅した後にすることを要しない。
一 法定代理人又は制限行為能力者の保佐人若しくは補助人が追認をするとき。
二 制限行為能力者成年被後見人を除く。)が法定代理人、保佐人又は補助人の同意を得て追認をするとき。
(削る)

 

改正案の内容

追認の効果(民法122条)の改正

現行民法122条には、ただし書に「追認によって第三者の権利を害することはできない」と定められています。改正民法ではこの規定が削除されています。その理由は、そもそも追認は、不確定ではあるものの有効であると扱われている法律行為を確定的に有効とするに過ぎず、第三者の権利を害することはないから、実際には適用場面がなく不要な規定であると批判されていました。

取り消すことができる行為の追認(民法124条)の改正

改正民法124条1項では、取り消すことができる法律行為の追認をするには法律行為を取り消すことができるものであることを知ってする必要があるという判例法理(大判大正5年12月2859日民録22輯2529頁)が明文化されました。

取り消すことができる行為の追認は、その行為についての取消権の放棄であると解されており、このような理解から、学説上も、上記判例の立場は支持されていました。そこで、「追認権者が取消権を行使することができることを知った後」という要件が追加されました。

また、「追認権者が取消権を行使することができることを知った」と言えるためには、そのような行為がされたこと自体を認識していることが必要です。さらに、「取消し」という概念についての正確な法的知識までは不要ですが、その法律行為の効力を否定する権利があることを認識していることが必要です。

これに伴い、同条2項が定める「行為能力者となった後にその行為を了知したとき」という要件は、1項の要件と重複することとなるので、現行民法124条2項が削除されます。すなわち、民法124条2項は、成年被後見人が行為能力者となった後に追認するにはその行為を了知することが必要であると規定するが、これは、法律行為の追認はその行為を取り消すことができることを知ってしなければならないことを、成年被後見人について定めたものであるとされています。改正民法124条1項のように、追認一般について、その行為自体の了知を含めて、その行為について取消権を行使することができることを知った上でしなければならない旨の規定を設けるとすれば、成年被後見人が行為能力者になった場合にについて特に同項のような規定を設ける必要はなくなるからです。

 

なお、この改正によって、現行民法125条に定める法定追認の解釈が変更となります。判例(大判大正12年6月11日民集2巻396頁)は、民法125条の規定は取消権者が取消権の存否を知っていると否とを問わずその適用があるとしています。学説も、法定追認は、黙示の追認がされたとの相手方の信頼を保護し、法律関係を安定させるために確定的に追認としての効果を認めたものであることから、これを支持するのが一般的です(ただし、成年被後見人については、同法124条2項の趣旨から、法定追認の場合でも行為の了知が必要であるとする)。法定追認は民法124条の規定により追認をすることができる時以後にする必要がある(同法125条)とされているため、124条を上記のように改正すると、必然的にこの判例法理を変更することになります。

もし、このような判例の立場を維持しようとすれば、改正民法124条1項「追認権者が取消権を行使することができることを知った」という要件を法定追認には適用しない旨の規定を設ける必要があります。しかし、法定追認は、明示的に追認する旨の意思を表示しなくても、当事者の追認の意思を推測させる事実を列挙し、追認が行われ得る状態になった後にこれらの事実があったときは追認があったものとみなすこととしたものであり、追認の前提となる要件について、通常の追認と異なる扱いをする理由はないと考えられます。そこで、改正民法124条1項の「追認権者が取消権を行使することができることを知った」という要件が法定追認にも適用されることを前提に、同法125条を改正しないこととしています。

 

改正民法124条2項では、同条1項の追認の要件のうち「取消しの原因となっていた状況が消滅した後」であることを要しない場合に関する規律であり、同項1号が現行民法124条3項の規律内容を維持するものです。

他方、2号は、制限行為能力者成年被後見人を除く。)が法定代理人、保佐人又は補助人の同意を得て取り消すことができる行為の追認をすることができることは異論なく認められていることを踏まえて、このことを明文化するものです。いずれの場合でも、「追認権者が取消権を行使することができることを知った後」という要件は必要です。

 

宅建試験への影響

追認について、単独で出題されることはありませんが、選択肢の一つとして過去に何度か出題されたことがあります。特に、今回の改正で重要なのは前述した判例変更です。判例変更を伴うということは、事例問題で出題されやすいです。

 

 

法務省:民法の一部を改正する法律案

 

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