代理契約と媒介契約
代理契約と媒介契約とでは何か違いがあるの?
あります。宅建業者が依頼を受けて行う場合には報酬額の上限が異なります。また、契約の主体が異なります。さらに代理には媒介にはない特殊な法律関係があります。
代理と媒介は何が違うの?
契約の主体が異なります。代理の場合は、代理人が主体となります。依頼を受けた宅建業者が買主などと直接契約をし、依頼者はその結果に従うだけです。それに対して、媒介の場合は、あくまでも宅建業者に媒介を依頼した人が契約の主体であり、宅建業者は依頼者の行う売買契約などを仲介することが仕事になります。
代理の場合は報酬額も異なるの?
異なります。売買または交換の場合に一方の依頼者から受け取ることができる代理の報酬額は媒介の2倍です。居住用建物の賃貸借の場合に一方の依頼者から受け取ることができる代理の報酬額も媒介の2倍です(ただし、依頼者の承諾を得ている場合は媒介でも代理と同様に借賃の1か月分に消費税を加えた金額を受け取ることができます)。
依頼者だけでなく相手方の代理人にもなれば報酬額4倍に?
なりません。依頼者から受け取る報酬額と、売買や交換の相手方から受け取る報酬額を足した額は、媒介で一方の依頼者から受け取ることができる額の2倍が上限です。つまり、双方から依頼を受けても上限は変わりません。ちなみに、民法では、依頼者だけでなく相手方の代理人になることを双方代理と呼び禁止されています。双方から代理権を与えられると、依頼者の利益を害する可能性があるからです。したがって、依頼者の利益を害さないのであれば、双方代理も許されます。たとえば、双方からあらかじめ承諾を受けているような場合です。
付け足し(新聞記事には書かなかったものです。)
最近の宅建試験では、建物の売買にかかる消費税を計算させる問題がよく出題されています。一度自分で計算すれば一発で覚えます。計算といっても、建物売買に含まれている消費税額を控除するだけです。後は、消費税を控除した代金をベースに速算法で計算するだけです。控除の方法は、税込価格を1.08で割ることで算出できます。
- 消費税は、本体価額の算出(取引代金や借賃等からの消費税の控除)の場面で問題となる。
- 報酬限度額の計算は、本体価額(税抜き価額)を基礎に算出する。よって、売買代金(土地を除く)や建物の借賃(居住用建物を除く)等の消費税の課税対象が、消費税込みの価額で表示されている場合は、消費税分を抜いて本体価額を算出しなければならない。
(田中謙次著「2016最速deうかる宅建士基本テキスト」517頁から引用)
誰でも代理人になれるの?
なれます。もちろん、宅地・建物の売買等を事業として代理するには原則として宅建業者でなければなりません。それ以外の場面では、民法上、誰でも代理人となることができます。たとえ未成年者であっても代理人として選任できます。その代わり、未成年者であることを理由に代理人として行った契約を取り消すこともできません。また、代理人は契約を結ぶ権限まで与えられる人なので依頼者との間には高い信頼関係があるのが普通です。したがって、どちらが死亡しても、代理権は消滅することになっています。つまり、相続しません。
今日のポイント
- 代理の場合は代理人が、媒介の場合は依頼者が契約の主体
- 代理の報酬額の上限は媒介の2倍
- 代理人には誰でもなれるが、高度の信頼関係が必要なので死亡しても相続しない
(過去問にチャレンジ!)
【問 題】 AがA所有の甲土地の売却に関する代理権をBに与えた場合における次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。なお、表見代理は成立しないものとする。(平成22年度 問2)
- Aが死亡した後であっても、BがAの死亡を知らず、かつ、知らないことにつき過失がない場合には、BはAの代理人として有効に甲土地を売却することができる。
- Bが死亡しても、Bの相続人はAの代理人として有効に甲土地を売却することができる。
- 18歳であるBがAの代理人として甲土地をCに売却した後で、Bが18歳であることをCが知った場合には、CはBが未成年者であることを理由に売買契約を取り消すことができる。
- Bが売主Aの代理人であると同時に買主Dの代理人としてAD間で売買契約を締結しても、あらかじめ、A及びDの承諾を受けていれば、この売買契約は有効である。
解答:4
- × 代理権は、本人の死亡により消滅します。したがって、BはAの代理人として有効に甲土地を売却することはできません。
- × 代理権は代理人の死亡により消滅すします。したがって、Bの相続人はAの代理人として有効に甲土地を売却することができません。
- × 代理人は行為能力者である必要がありません。本人が制限行為能力者に代理権を授与した場合、代理人の制限行為能力を理由として代理行為を取り消すことはできません。したがって、CはBが未成年者であることを理由に売買契約を取り消すことができません。
- ○ 同一の法律行為(契約などのこと)について、当事者双方の代理人となることは、債務の履行及び本人があらかじめ許諾した行為などを除き、原則として禁止されています。本人や相手方の利益を害するおそれがあるからです。法的な効果としては無権代理になります。したがって、あらかじめ、A及びDの承諾を受けていれば、売買契約は有効となります。
この記事は2014年5月26日の「全国賃貸住宅新聞」に掲載したものです。
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