田中嵩二の宅建士&賃貸管理士試験ブログ

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宅建業免許の有効期限切れの前日に土地売買の仲介はできるの?

Q.宅建業免許の有効期限切れの前日に土地売買の仲介はできるの?

 

A.有効期限内に土地売買の契約が成立していれば期限切れの後でも取引を完結できます。

 

平成28年度宅建試験に出題された問題をピックアップして解説して行きます。

 

宅建士の資格があれば自由に不動産の売買を仲介できるの?

できません。原則として宅地建物取引業の免許を受けなければ不動産の売買を仲介することはできません。少し掘り下げてそのあたりを説明します。
宅地建物取引業法(以下、宅建業法と略します)が制定されたのは、第二次大戦後です。戦後の未曾有の住宅不足がその最大の要因でした。また、戦後の経済復興に伴い、一般の宅地建物の需要が拡大し、その取引が盛んになったことも拍車をかけました。宅地建物の取引が増加すると、それに比例し、紛争や事故も激増しました。また、宅地建物の取引には、相当の知識、経験、資力、信用等が必要となります。しかし、宅建業法が制定されるまでは、誰でも自由にこの業界に参入できたこともあり、知識や経験もない者が自由に取引に従事したり、逼迫した住宅事情につけこんで悪事を働く業者も少なからず存在しました。そこで、宅地建物という重要な財産の取引を安全に取り扱い、宅地建物の円滑な流通と利用の促進を図るため、宅地建物の取引に関する規制の必要性が高まり、法制定の運動が起こりました。このような状況を背景に、昭和27年に宅建業法が制定され、後に宅地建物取引業の免許がなければ不動産取引を業として行えないようになりました。

 

無免許営業で送検された人の未成年の息子は免許を受けられるの?

受けられない場合があります。免許欠格事由の中の「免許の申請前五年以内に宅地建物取引業に関し不正又は著しく不当な行為をした者」に該当する可能性があります。
宅建業は衣食住にかかわる重要な財産を扱うので公益性を有しています。したがって、信頼のおける人や会社でなければ宅建業は行えません。そこで、宅建業法では、宅建業者を開業しようとする人に犯罪歴等があると申請したとしても免許を交付しない仕組みを定めています。これを免許基準または免許欠格事由と呼びます。たとえば、犯罪を行って刑務所に入ることになれば、刑が満了した後5年経たなければ免許を受けられません。その他、5年以内に暴力団員だったとか、業務停止処分に違反した宅建業者の取締役だった等の場合も同様に免許を受けることができません。かなり厳しい業界です。

 

国土交通大臣の免許と都道府県知事の免許では違いがあるの?

法的な効力において違いはありません。どちらの免許でも、全国で宅建業ができます。また、同じく5年毎に更新が必要となります。更新申請は、有効期間満了の日の90日前から30日前までに行わなければなりません。ただし、更新申請を行えば、免許の有効期間満了日がきても、新たな免許について処分があるまで、前の免許の効力が存続するので、途中で宅建業ができなくなるわけではありません。もし、更新しないと免許の効力は失われますので忘れずに更新申請する必要があります。
国土交通大臣免許か都道府県知事免許かの違いは、事務所をどこに設置するかによります。1つの都道府県内にのみ事務所を設置すれば都道府県知事免許、二つ以上の都道府県(都と道は一つしかないので表現が難しいですが)に設置した場合は国土交通大臣免許となっているだけです。

 

知事免許の宅建業者が全国展開するには免許を取り直すの?

事業を継続していけば、ずっと創業当時のままというわけにはいかなくなります。発展して会社が大きくなれば事務所を他の県にも設置したり、反対に事業縮小で事務所を減らしたり、事務所を移転したりすることもあるでしょう。そうすると、宅建業の免許も以前に受けたままでは不適当になってきます。そのようなとき、宅建業者は新たな事務所形態に即した新しい免許に変更する必要があります。これを免許換えといいます。次の三つの場合に免許換えが必要となります。

  1. 国土交通大臣の免許を受けた者が1つの都道府県の区域内にのみ事務所を有することとなったとき。
  2. 都道府県知事の免許を受けた者がその都道府県の区域内における事務所を廃止して、他の1つの都道府県の区域内に事務所を設置することとなったとき。
  3. 都道府県知事の免許を受けた者が2つ以上の都道府県の区域内に事務所を有することとなったとき。

なお、免許換えは法的な義務なので事務所を設置する前に申請する必要があります。もし、申請を怠ると必ず免許取消処分となりますので注意が必要です。ちなみに、宅建業者が免許換えをしなかったり、免許取り消しになったり、亡くした免許証を発見したり、廃業したりする場合は、免許権者に返納しなければなりません。ただし、更新せずに免許の有効期間が満了した場合は、免許証を返納する必要がありません。

 

有効期限が切れた免許では何もできないの?

免許の有効期間が満了したときや、免許取り消し処分を受けたとき、その他死亡・合併・破産・解散・廃業したときは、その宅建業者または相続人等の一般承継人は、締結した契約に基づく取引を結了する目的の範囲内においては宅建業者とみなされます。つまり、免許が有効な時に、契約を締結しておけば、その移転登記手続きや引渡し等は宅建業者として仕事を継続できるということです。

 

(2016年度の問題にチャレンジ!)

【問 37】 宅地建物取引業法(以下この問において「法」という。)の規定に関する次の記述のうち、正しいものはいくつあるか。
ア 宅地建物取引業者A(甲県知事免許)が乙県内に新たに支店を設置して宅地建物取引業を営んでいる場合において、免許換えの申請を怠っていることが判明したときは、Aは、甲県知事から業務停止の処分を受けることがある。
イ 宅地建物取引業者Bが自ら売主として宅地の売買契約を成立させた後、当該宅地の引渡しの前に免許の有効期間が満了したときは、Bは、当該契約に基づく取引を結了する目的の範囲内においては、宅地建物取引業者として当該取引に係る業務を行うことができる。
ウ Cが免許の申請前5年以内に宅地建物取引業に関し不正又は著しく不当な行為をした場合には、その行為について刑に処せられていなかったとしても、Cは免許を受けることができない。
エ 宅地建物取引業者D(甲県知事免許)が乙県内に新たに支店を設置して宅地建物取引業を営むため、国土交通大臣に免許換えの申請を行っているときは、Dは、甲県知事免許業者として、取引の相手方等に対し、法第35条に規定する重要事項を記載した書面及び法第37条の規定により交付すべき書面を交付することができない。


1 一つ

2 二つ

3 三つ

4 四つ

 

正解:2
  1. × 都道府県知事の免許を受けた宅建業者が、2以上の都道府県の区域内に事務所を有することなる場合、国土交通大臣の免許を受けなければなりません(宅建業法7条)。この免許換えの申請を怠っていることが判明したときは、免許取消処分の対象となります(宅建業法66条1項5号)。
  2. 〇 有効期間が満了したとき、免許は失効します。ただし、宅建業者であった者は、その宅建業者が締結した契約に基づく取引を結了する目的の範囲内においては宅建業者とみなされます(宅建業法76条)。
  3. 〇 免許の申請前5年以内に宅地建物取引業に関し不正または著しく不当な行為をした者は免許を受けることができません(宅建業法5条1項4号)。不正な行為とは宅建業法その他関係法令の規定に違反した行為をいい、著しく不当な行為とは宅建業法その他関係法令の規定違反ではないが宅建業法の目的や規定の趣旨に照らして著しく妥当でないとか不適当な行為をいいます。しかし、その行為によって刑に処せられていることは要件となっていません。したがって、Cは免許を受けることができません。
  4. × 宅建業者が免許換えにより新たな免許を受けたときは、その者に係る従前の免許はその効力を失います(宅建業法7条1項)。申請中ということはまだ従前の免許が効力を有していることを意味します。したがって、Dは、甲県知事免許業者として業務を行います。

 

 

  

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