田中嵩二の宅建士&賃貸管理士試験ブログ

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代理人の行為能力(民法102条)の改正

代理人の行為能力(民法102条)の改正

平成27年3月31日 民法の一部を改正する法律案が後の宅建士試験に与える影響について定期的に解説します。

 

新旧対照条文

現行

(代理人の行為能力)
第102条  代理人は、行為能力者であることを要しない。 

改正案

(代理人の行為能力)
第102条
制限行為能力者が代理人としてした行為は、行為能力の制限によっては取り消すことができない。ただし、制限行為能力者が他の制限行為能力者法定代理人としてした行為については、この限りでない。

 

改正案の内容

本文は、民法102条の規律の内容を維持しつつ、制限行為能力者が代理人である場合における具体的な規律の内容を明確にすることを意図するものです。
ただし書きは、本文の例外として、制限行為能力者が他の制限行為能力者法定代理人である場合に関する規律を定めるものです。制限行為能力者が他の制限行為能力者法定代理人であることは想定され得る事態であるため、一定の要件の下で取消しを認める必要があるとの指摘がされていることから、新設されました。

 

現行民法102条は、代理人は行為能力者であることを要しないと規定していますが、同法111条1項2号は、代理権の消滅事由として代理人が後見開始の審判を受けたことを要件としています。また、同法847条、876条の2第2項、876条の7第2項は、後見人、保佐人、補助人のそれぞれの欠格事由として成年被後見人等であることを要件としない一方で未成年者であることを要件としており、同法833条、867条第1項は、未成年者による親権の行使を禁じています。このように、制限行為能力者任意代理人または法定代理人となることができるのかについて明確ではありません。

ただ、本人があえて制限行為能力者任意代理人に選任する場合には、その効力を否定する必要はないし、任意代理人に選任された制限行為能力者の代理行為について何らかの制限を加える必要もないでしょう。また、制限行為能力制度の理念であるノーマライゼーションに照らせば、制限行為能力者法定代理人となることを一律に否定するのは適当でないし、そもそも親権者が保佐開始の審判を受けた場合などのように制限行為能力者法定代理人となる事態は避けられません。
そうすると、親権者が保佐開始の審判を受けた場合などについては、本人となる未成年者の保護という制限行為能力制度の目的が十分に達せられないおそれがある上に、本人である未成年者が代理人の選任に直接関与するわけではないため代理人が制限行為能力者であることのリスクを本人負わせてしまうことになります。そこで、ただし書きが新設されました。

 

宅建試験に与える影響

宅建試験では、制限行為能力と代理双方ともよく出題されています。

未成年者が実際に不動産取引をすることは多くないが、代襲相続により未成年者が不動産を相続し、親権者である親がその不動産を代理して売却することを宅建業者に依頼することがあり得ます。民法102条ただし書きの新設が想定する内容は、さらにその親権を有する親が被保佐人等の制限行為能力者となった場合には、取消権が否定されないとするもので、実務上はそうそう遭遇し得ない場面かと思われます。

ということで、理論的には法律の隙間を埋めることで未成年者等の社会的弱者保護への手抜かりがないようにできるわけですが、実務的ではない事案しか想定できないものが宅建試験の問題になるかは疑問です。とはいっても、新設規定なので、条文抜き書きに近い形式での出題はあり得ますので念のため暗記しておきましょう。

 

 

法務省:民法の一部を改正する法律案

 

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