田中嵩二の宅建士&賃貸管理士試験ブログ

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無権代理人の責任の(民法117条)の改正

無権代理人の責任の(民法117条)の改正

平成27年3月31日 民法の一部を改正する法律案が後の宅建士試験に与える影響について定期的に解説します。

 

新旧対照条文

現行

無権代理人の責任)
第117条  他人の代理人として契約をした者は、自己の代理権を証明することができず、かつ、本人の追認を得ることができなかったときは、相手方の選択に従い、相手方に対して履行又は損害賠償の責任を負う。
2  前項の規定は、他人の代理人として契約をした者が代理権を有しないことを相手方が知っていたとき、若しくは過失によって知らなかったとき、又は他人の代理人として契約をした者が行為能力を有しなかったときは、適用しない。

改正案

無権代理人の責任)

第117条
他人の代理人として契約をした者は、自己の代理権を証明したとき、又は本人の追認を得たときを除き、相手方の選択に従い、相手方に対して履行又は損害賠償の責任を負う。
2 前項の規定は、次に掲げる場合には、適用しない。
一 他人の代理人として契約をした者が代理権を有しないことを相手方が知っていたとき。
二 他人の代理人として契約をした者が代理権を有しないことを相手方が過失によって知らなかったとき。ただし、他人の代理人として契約をした者が自己に代理権がないことを知っていたときは、この限りでない。
三 他人の代理人として契約をした者が行為能力の制限を受けていたとき。

 

改正案の内容

無権代理行為とは、代理権がないのにもかかわらず、代理人であるとして行われた行為、すなわち、代理行為成立の要件のうち、代理権だけを欠き、他のものを備えている行為をいいます。代理権がまったくない場合と、権限を越えている場合の両方を含みます。

民法117条は、取引の安全をはかるために、無権代理人に重い無過失責任を負わせた規定です。

 

改正案117条1項は、現行民法117条第1項の規律の内容を維持しつつ、同項の「自己の代理権を証明することができず」という規定ぶり等をより明確に表現することを意図するものです。

 

改正案117条2項1号は、現行民法117条2項の規定のうち相手方が悪意である場合に関する部分を維持するものです。


同条同項2号は、現行民法117条2項の規定のうち相手方に過失がある場合に関する部分を維持しつつ、これにただし書を付加して、相手方に過失がある場合でも、無権代理人自身が悪意であるときは、無権代理人の免責を否定する旨を新たに定めるものです。有力な学説を踏まえ、相手方と無権代理人との間の利益衡量をより柔軟にすることを意図するものです。


同条同項3号は、現行民法117条2項の規定のうち代理人の行為能力に関する部分を維持するものです。

 

宅建試験への影響

宅建試験では無権代理は超頻出分野です。特に、本人や無権代理人が死亡した場合でその間で相続が生じた場合の判例がよく出題されています。

実務的には、もちろん、無権代理という事案は稀です。犯罪行為でもあるので、よくあっては困ります(笑)。ただ、稀なことではありますが、権限を越えて不動産を売却したり抵当権を設定していたりという事案もあるので、有権代理と無権代理分水嶺をしっかりと把握して、実務的な判断ができる能力は当然に宅地建物取引士に求められます。 

ということで、宅建試験にもよく出題されるのでしょう。

今回の改正案では、2項2号ただし書きが重要でしょう。無権代理人の主観的要件により相手方の要件が緩和されるという利益衡量が条文化した点は条文を丸暗記するくらいがベストです。

 

法務省:民法の一部を改正する法律案

 

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